金与正「秘密警察幹部ら8人処刑」…北朝鮮国内で恐怖の対象

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米タブロイド誌グローブは最近、北朝鮮の金正恩総書記(国務委員長)が「5月6日から6月5日の間に秘密クーデターを起こした金与正により殺害された」と報道した。グローブは「6月以降金委員長は公式席上に姿を見せていないが、先月9日の北朝鮮政権樹立記念日行事の際に突然登場した。この時は影武者だった」とも報じた。

ハッキリ言って、単に金正恩氏の動静情報に推測を重ねただけのデタラメである。しかし、金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が遂に、クーデター説の主犯として描かれた点で感慨深い話ではある。世間が金与正氏を、兄に次ぐ北朝鮮の「実力者」として認識し始めたことを示唆しているからだ。

北朝鮮国内ではすでに、金与正氏が恐怖の対象になっている可能性がある。

昨年11月13日、秘密警察である国家保衛省で電波探知を担当する10局のハン局長と幹部ら8人が、平壌市郊外の龍城(リョンソン)区域にある同省所有の運動場で処刑された。処刑命令を下したのは、ほかでもない、金与正氏だったという。

(参考記事:卒倒する人が続出…金与正命令「処刑実行」の凄惨な場面

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8人は横領の容疑をかけられていたが、誤解だと抗弁していた。しかし、金与正氏はいっさい情状を酌量することなく、「党と革命が危機に瀕しているときに、裏切りかねない分子ども」であるとし、処刑を断行させた。

これ以外にも、金与正氏の命令で処刑が実行されたとの情報が複数、北朝鮮国内から漏れ伝わっている。

昨年6月、韓国と合同で運営していた南北共同連絡事務所を爆破して以来、金与正氏は「強面」のイメージを強めている。そこには、独裁体制の最大の弱点を埋めておこうとの意図があるように思われる。

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独裁体制最大の弱点は、独裁者本人にある。事故や病気で急死したり、敵国によって除去されたりしたら体制は途端に動揺しかねない。

たとえ北朝鮮が核兵器で守りを固めていても、米国などの手で金正恩氏が除去されてしまった場合、米韓や日本に「核の報復」を実行できることのできる幹部がいるだろうか。実行すれば、米国の再報復により破滅することは免れない。

しかし仮に、独裁者が後継者、あるいは自分の分身のような存在を確保していれば、敵国が除去作戦に乗り出すリスクは小さくなるだろう。金与正氏が、兄と同じくらい危険な存在であると国際社会に認識されれば、米韓などの対北朝鮮戦略はいっそう慎重にならざるを得ない。

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だが、金与正氏の現在の立ち位置は、北朝鮮の歴史上で類を見ないものだ。自らの権威の一部を妹に分け与えているかのような金正恩氏の行動が、体制の将来に利益だけをもたらすかどうかは未知数なのだ。