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朝鮮民族最大名節の秋夕が迫っている。秋夕は、我が民族が秋に楽しむ美しい民族最大の祝日である。

韓国に来て7回目の秋夕を迎える。北朝鮮の秋夕に慣れた私にとって、3日から1週間以上も休む韓国の秋夕には、いまだに慣れずにいる。北朝鮮での秋夕は韓国のように民族最大の祝日ではなく、単なる民族的な休日の1日に過ぎなかった。完全に休めるだけでも有り難いという雰囲気だった。

また、秋夕には国営テレビを通じて様々な宣伝扇動が行われる。禿山ではあるが、墓参りをする姿が放映され、玉流館や高麗ホテル前の飲食店街、平壌の有名レストランで秋夕料理を楽しむの労働者の姿、相撲やユンノリに興じる人々の姿が見られる。北朝鮮にも娯楽があると思ったものだ。

■北朝鮮当局は秋夕の祭祀(チェサ=法事)は迷信的であると宣伝

秋夕にまっさきに思い浮かべるのは、やはり墓参りだ。北朝鮮では「棗栗柿梨」「紅東白西」(注1)などの決まり事を知る人はほとんどいない。確かに、私が子供の頃は大人たちは決まり事を守っていたが、いつまで守られていたのかはわからない。祭祀に大しては労働党は「虚礼虚式」「封建的」「迷信」だと否定的に宣伝し、自然と祖先の風習や作法が消えていった。

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幸いなことに秋夕に先祖の墓を訪ねる事は現在まで許されている。韓国では家で祭祀を行った後に墓参りをするが、北朝鮮では墓参りに行くだけだった。余談ではあるが、北朝鮮で封墳(土饅頭)が残されている墓は、山奥の人目につかない場所以外には残っていないだろう。

その理由は金正日のある一言だ。金正日が現地視察している時、禿山に所々に見える墓地を見つけて、こう言ったという。

「こんなにも死人が多いのか。見たくないので処理せよ」

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金正日の指示の結果、封墳は全て取り壊され、平坦な地面に作り変えられた。

■平壌での墓参りは幹部特権

平安南道大同郡ウォンロ里に私の父の墓があるが、ここも例外なく平らな墓地になってしまった。翌年に訪れた時は墓がどこにあるのかが分からず1時間以上も探したのを鮮明に記憶している。都市の住民の墓参りはまるで戦争のようだ。数カ月前からガソリン?凾゚て、移動するための車も手配しなければならない。

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秋夕には移動手段は全て使われる。幹部の墓参りを中心に方角が同じ人々は同席する。運転手は、幹部の墓参りの後に自分の先祖の墓参りを行う。こういったことから移動手段を確保出来ない人々は墓参りを諦めるほどだ。もはや墓参りは「幹部の特権」となっている。

故郷、北朝鮮を離れる時、せいぜい3年もすれば帰って来られると思っていた。心の中では近いうちに南北が自由に往来できるようになるだろうと自分に言い聞かせている。しかし、もはや長くはないだろう金正日の後釜には金正恩が待っているので安心できない。

秋夕−いつも、この時期を迎えると故郷が恋しくなる。
(注1)
祭祀の供物には並ぶ順番が決まっている。その並び方を東西南北の方位を使って表現した言葉。
「棗栗柿梨(ジョユルシイ)」西側からナツメ(棗)、栗、柿、梨の順に並べる。