北朝鮮の北部、両江道(リャンガンド)では、大々的な非社会主義・反社会主義現象(風紀の乱れ)の取り締まりが行われ、些細なことで逮捕される人が続出している。
この地域は中国との国境に接することから、密輸、脱北の幇助などの違法行為が地元経済に組み込まれており、そんな現状を根底から変えるため、コロナ対策を名目にして、取り締まりを行っているのだろう。
(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域)取り締まりのターゲットとされている人の一つが、「イナゴ商人」と呼ばれる女性たちだ。国が定めた市場ではなく、その周辺の路上で露店を開いて商売している人々を指すが、市場で商売するに求められる一種の税金、市場管理費(ショバ代)すら払えないほど零細な商人だ。
現地のデイリーNK内部情報筋は、今月10日の朝鮮労働党創建76周年を控え、1日から10日までの間に、恵山(ヘサン)市内でイナゴ商人に対する集中取り締まりが行われた。当局は、安全員(警察官)や糾察隊員を総動員し、事情を問わずにイナゴ商人から商人を没収した。
(参考記事:【最新 北朝鮮内部映像】取り締まりに逃げ出す「イナゴ商人」たち)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面生活がかかっているだけあって、イナゴ商人の集団は激しく反発、あちこちで暴力沙汰となった。そのうちの30人が逮捕され、労働鍛錬隊(刑務所)送りとなったとのことだ。
(参考記事:「どうやって食えというのか」北朝鮮で集団抗議活動、当局緊迫)8日には、市内の恵江洞(ヘガンドン)で2歳の赤ん坊を背負って道端で白菜を売っていた30代のキムさんが、取り締まりにやってきた糾察隊員から「党がやるなというのならやめろ、なぜ道端で商売するのか」と因縁をつけられ、ワイロとしてタバコを要求された。
キムさんが断ると、糾察隊員は品物を没収して罰金を取ると脅迫した。それを見ていた別の商人、チェさんが抗議してけんかに発展。隣りにいた夫や家族まで加わって、大げんかになってしまったという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面すべての権限が金品を生み出す源泉となる北朝鮮において、取り締まりは警察官などがタバコ、酒、少額の現金など商人から奪い取るチャンスとなる。
(参考記事:北朝鮮、当局の横暴に反撃する商人たち「賄賂も将軍様の指示か!!」)当局は、国家的な祝日である10月10日を問題なく迎えるために、取り締まりを行ったわけだが、一般庶民にとっては、日々の糧を得るための商売をやめらせられ、イベント準備費用として金品を徴収されるなど、踏んだり蹴ったりの日だ。
(参考記事:ワイロでなし崩しにされる北朝鮮の「イナゴ商人掃討作戦」)