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北朝鮮から中国に派遣されて貿易を営んでいたチャン氏は、中国企業の関係者に「将軍様は、張成沢(チャン・ソンテク)を中心に黄金評や羅先開発を進めているが、青年大将(金正恩氏)が張の独走に不満なことから黄金評開発の今後は不透明だ」と説明した。チャン氏としては、黄金評より内陸の無煙炭鉱山への投資がより価値があることを説明したつもりだった。

この話をキャッチした偵察総局要員は「この発言は平壌に報告する」とチャン氏を脅迫し契約から撤退させた。その後、自分たちがこの中国企業と契約した。

仲間の足を引っ張りながら外貨稼ぎをする偵察総局も苦戦はしている。他の機関から稼ぎ口を横取りしたとしても限界があり、新たな外貨稼ぎ方法を考えなければならない。そんな彼らが考えだしたのは「仲間を売って金を儲ける」だった。これについて対北消息筋のBさんは興味深い話をした。

「『黒金星』の別名で知られている元安全企画部(国情院)の工作員パク某氏の北朝鮮側のカウンター・パートナーがイ某(58)だ。このイ氏こそ仲間を売って忠誠資金を稼ぎ、個人財産を蓄えている代表的人物だ」

この北朝鮮側のイ氏とは何者なのか。北朝鮮の対南対話派として知られているイ氏は、韓国の元安企部パク氏が、昨年10月に軍事機密を北朝鮮に譲り渡した疑惑で拘束起訴された捜査過程で名前が名前があがった。韓国メディアではイ氏の経歴や所属について様々な意見が入り乱れているが、B氏は「イ氏が偵察総局の所属であることは公然たる事実だ」と話した。

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彼は、金正恩登場以後に偵察総局内で『強硬派』が勢力を伸ばし『対話派』が粛清されるなかでも、生き残ったと言われている。中国でビジネスパートナーや韓国側の要人に会う場でも「私は将軍様の近い親戚だが、強い向かい風にも耐えられる」と自身の権力を自慢するとのことだ。

このイ氏は仮名を使い分けて金大中・盧武鉉政権時に多くの韓国側要人と接触していることもわかった。第2次南北首脳会談の成立に尽力したとの話もある。李明博(イ・ミョンバク)政権のスタート以後も、韓国政府関係者の間では、南北間の連絡窓口として役割を果たせる人物に選ばれていた。主に対南工作業務に従事したが経済知識も豊富でイ氏に会った南側の要人は北朝鮮の経済専門家として評価する場合もあったという。

『黒金星』のパク氏が韓国でスパイ容疑から調査された当時、イ氏は北朝鮮に召還されて国家安全保衛部の調査を受けたと伝えられる。北側から見てもパク氏の逮捕が理解できない部分が多かったからだ。

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■高位級の対南工作員が「仲間」を打って私服を肥やす

パク氏は、2003年から2005年まで北朝鮮に軍事関連資料を譲り渡した容疑で、昨年12月の第1審では懲役7年と資格停止7年が宣告された。2005年にイ氏に軍事資料を渡したパク氏が、なぜ2010年に拘束されたのかは謎だ。また、2003年に譲り渡した資料を韓国の捜査当局がどれほど把握していたのかも疑問だ。

本来、スパイ事件では犯行に使われた『物的証拠』が重要だ。5年前の事件の証拠を韓国の捜査当局が詳細に把握していたということは、パク氏に関連した北側の人物が韓国捜査当局に協力していた可能性が高いことを匂わせる。

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また、イ氏は側近に「南朝鮮にスパイの情報を提供すれば100万ドルはもらえるか」と尋ねたという。パク氏の逮捕に関してイ氏が南側に決定的な情報を提供したことを裏付ける情報かもしれない。

B氏は、イ氏が北朝鮮に送還されて調査された当時を思い出しながら語った。

「イ氏は、長年の対南工作の経験によって国家安全保衛部の内密調査を難なく逃れた。証拠不十分で釈放されたが、保衛部の調査を受けたにもかかわらず、無傷で出てきた人ははじめてかもしれない」

また、B氏は中国駐在員の間では、イ氏が中国に派遣されている仲間(偵察総局要員)の名簿を渡す代価として南側や第3国に逃げる準備しているとの噂が拡がっていると付け加えた。

平壌ではリュ・ギョン前国家安全保衛部副部長など対南対話派の粛清や処刑が続き、中国では偵察総局が他の機関の主要幹部へ内偵調査をするなど、泥仕合の状況になっていることからイ氏も自分の身辺に大きな不安を感じているという。

イ氏は、2009年に老後に備えて労働党の資金で北京の外交官用賃貸住宅に18万ドルを投資するなど私腹を肥やすことに力を注いだという。B氏は、「中国の駐在員が平壌ではなく、中国での財産を蓄えることは別の腹づもりがあるのではないか。イ氏はよく『私の父の故郷は慶尚道(キョンサンド)、河東(ハドン)だ』と言っているが、機会さえあればすぐにでもここを離れるだろう」と話した。

かつて、イ氏は『北京賃貸住宅投資件』が摘発された時、2億中国人民元の罰金を上部に払わなければ平壌に連れ戻されるという通知を受けたことがあった。しかし、彼は相変らず中国に住んでいる。彼が、いくら大きな利権を手にしていたとしてもさすがに2億人民元もの大金を一度に準備するのは無理だったとの疑惑は広く知れ渡っている。

2005年に元安企部パク氏と結託したスパイ事件から、2009年の資金難と解決方法、そして2010年のパク氏の拘束まで、イ氏に関しては数多くの疑惑が残るというのがB氏の話だ。

一部では、イ氏をはじめとする大物の駐在員数人が西側への脱出を密かに準備しているとの奄烽