今年3月に北朝鮮で始まった「平壌市1万世帯住宅」の建設事業。深刻な食糧難に見舞われている北朝鮮で、不要不急のプロジェクトのように思えるが、ハコモノの建設が目に見える成果として取り扱われるお国柄だけあって、是が非でも進めなければならないのだろう。
そして、またいつものように、無理な工事の進め方のせいで、多くの人の命が次々に失われている。
デイリーNK内部情報筋が伝えた、住宅建設現場での先月の死者数は14人。年齢は18歳から23歳で、いずれも外部の美装工事中の転落事故で死亡したとのことだ。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)
事故の原因として情報筋が挙げたのは睡眠不足だ。「突撃線」と称し、朝から晩まで作業を続けさせ、2〜4時間しか睡眠が取れない状態に追い込まれていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面次いで栄養不足。5月までは後方物資が補給されていたが、それ以降は減少。まともな食事を取れずに栄養失調状態で作業に当たらせていた。
さらには、暑さの影響も大きい。先月27日には最高気温が35度に達するなど、先月中旬から下旬にかけて、異常高温が続いていた。また、平壌ではめったにない熱帯夜となり、これも睡眠不足に拍車をかけたことが考えられる。
労災死亡事故が多発しているにもかかわらず、当局は「元帥様(金正恩氏)の命令、指示の期限内に執行しなければならない」と、兵士たちに無理な仕事を続けさせている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面現場では、わかっているだけで4月に23人、6月に8人の死者が発生しているが、労働環境の改善は全く図られていない。
「現場の指揮官たちは、安全点検は後回しにして、方針貫徹だけを叫び続けている。平壌市1万世帯住宅建設の現場は、事故が発生し続ける構造にはまった」(情報筋)
(参考記事:金正恩「高級ヴィラ」で死者続出の凄惨な現場)建設現場で人が次から次へと死に追いやられるのは、何ら珍しいことではない。各地のダム建設、マンション建設、高級リゾート「元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区」の建設など、ありとあらゆる建設現場で労災死亡事故が起きている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面いずれも適正な作業時間、スピード、安全装備の使用、充分な食事など、ごくごく当たり前のことができなくて死に至ったものだ。最高指導者の業績づくりのため、若者の命がゴミのように扱われているのが北朝鮮という国だ。
(参考記事:北朝鮮「倒れた作業員は連れ去られ、戻ってこれない」魔の工事現場)