金正日は5月に訪中してから内部の統制強化に力を注いでいるが、今回の電撃的な訪ロから政治的な指導力をより大きくさせる必要があると見られる。
『強盛大国』『三代世襲の構築』という課題を抱える金正日としては、経済協力などを通じた『外交的な期待』によって慢性的な経済難や指導部への不信という二つの内部的不満を軽く押さえ込む事が目下の課題という分析だ。
金英換(キム・ヨンファン)『時代精神』編集委員は、「2012年の強盛大国元年、金日成誕生100周年にむけて、全てを活用し総動員するという意志の浮黷セ。同時に部分的な経済的支援を導いて内部不満を少しでも解消させるための動き」と分析した。
今の金正日体制は改革・開放を選択できない限界性と経済難による幹部の規律弛緩などで、体制を管理するシステムに深刻な問題を抱えている。同時に、体制不信を統制できないほと耐久力が衰えている。
指導層からすれば、中ロのような友好国から援助を引き出して最大限に体制維持に利用するしか方法はない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面昨年、北朝鮮政府は党代表者会を通じて三代後継の公式化と幹部の若返りを試みたが、大きな効果はなかった。金正恩が後継者として指名して以来、「貨幣改革」「武力挑発」などのカードを切りながら体制の安定を狙ったが、逆効果だった。
あらゆる分野における検閲や取り締まりを強化したが、結局は北朝鮮住民から反発を招いただけだった。
この間、デイリーNKの内部消息筋は、金正日が切ったカードは、ブーメランのようにそのまま後継者の金正恩にかえり、住民の不満を高めたと伝える。「金正恩が登場してから生活がより苦しくなった。父親より正恩の方がひどい」との声もあるぐらいだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面住民は、一番の不満として経済の失敗を選ぶ。一日を暮らすのも大変ななかで「強盛大国」「三代世襲」はすでに説得力を失っている。
また、経済状況はより悪化しつつある。慢性的な食糧難や水害被害によってコメ価格も急騰している。金正日が訪ロしたその日、平壌の市場では、コメの値段が2600ウォンまで上昇した。水害被害で来年の食糧難の悪化も予想されている。
このような背景で、金正日は中ロの「友邦外交」にすがるしかなかった。住民の経済不満を出発点とする体制不信を和らげて、ある程度の信頼を回復しようとしている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面チョン・ソンジャン世宗(セジョン)研究所首席研究委員はデイリーNKとの電話インタビューで、「北朝鮮経済は、水害被害や貨幣改革の後遺症のために民心が悪化している。ロシアの訪問を通じて、経済回復に力を入れていると見せながら、金正恩を含む指導部へ住民の不満を緩和すればスムーズに後継体制を構築できると考えているだろう」と話す。
したがって、金正日は今回の訪ロを通じた経済的効果を最大限にプロパガンダとして利用するだろう。
北朝鮮の公式メディアが、金正日の訪ロとロシアの小麦粉5万トン支援を異例的に報道したのは、緻密な計算が裏に隠されている。5月の訪中直後、金正日は黄金評など経済協力に関したニュースを大々的に宣伝している。
チョン研究委員は「強盛大国を控えて『熱心に努力している』とのイメージを北朝鮮住民にアピールする試みだ。ロシアの支援をすぐさま宣伝したのも友好国の支援によって住民の生活は良くなるとの希望を持つ効果を期待したのだろう。もちろん、金正恩も今回の訪ロ成果に便乗して自身のイメージを改善し、不満を和らげるチャンスとして利用するだろう」と分析した。
また、高い中国依存が「後継体制の構築」に悪影響を及ぼす可能性があると判断もあるとの解釈もある。
金編集委員は、「後継体制を構築する上で、中国に過度に依存するば中国の影響に左右される状況になる。後継者への住民の不信が高い状況で、万が一中国が後継支持を撤回した場合を考えての保険という意味もある」と主張。
ここ数年間、北朝鮮の中国依存度が高まる反面、ロシアとの関係は冷えているとの指摘もあり、「金正日は対中依存度が過度に高まるのを警戒している」と指摘した。