まるでヤクザ映画…金正恩の「突撃隊」大乱闘の修羅場

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「ハコモノ事業」が大好きな最高指導者を頂く北朝鮮では、コロナ禍の下での極度の経済難の中でも、各地で大規模な建設計画が進められている。現場で主力として働いているのは、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊と、突撃隊と呼ばれる組織だ。

国が何らかの大規模建設を行うに当たって、各地の工場、企業所、機関に対して労働力の供出を求めるが、これを突撃隊と呼ぶ。表向きは全員が志願者だが、実際は半強制だ。報酬が一切支払われないばかりか、事故に遭っても一切の補償が得られない。待遇面でも問題があり、逃げてしまう人も続出している。

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無理やり動員されたことの腹いせに、暴力を振るう者もいる。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、まるでヤクザ映画のような突撃隊員の大乱闘について伝えた。

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事件が起きたのは、先月31日の午後10時ごろ。金正恩総書記肝いりの三池淵(サムジヨン)地区の建設に動員されていた黄海北道(ファンヘブクト)延山(ヨンサン)郡の突撃隊の隊員15人は、休暇を得て故郷に戻るために、恵山(ヘサン)に立ち寄った。駅頭で南へと向かう列車を待ちながら一杯やっているうちにすっかり泥酔。酔い醒ましのためか、駅周辺の恵興洞(ヘフンドン)をうろついていた。

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それを見咎めたのは、マンションの警備員を務めていた50代男性。昨今の治安悪化を受けて、幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)が多く住むマンションでは、住民が費用を集めて警備員を雇うことがあるが、この男性もそういう雇われ警備員だったのだろう。

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酔っ払って通りを闊歩する突撃隊員に警備員が「(コロナ規則の)通行禁止時間帯だから早く帰れ」と声をかけた。すると突撃隊員たちは「俺たちに家なんかない、お前の家をよこせ」と言って、警備員に殴る蹴るの暴行を加えた。

叫び声を聞きつけた近隣住民が一斉にやって来て、突撃隊員をたしなめようとしたが、結局は住民と突撃隊員の大乱闘へと発展した。

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マンションの人民班長(町内会長)は分駐所(派出所)に通報し、安全員(警察官)が出動したが、今度は安全員と突撃隊員が喧嘩となり、最終的には恵山市安全部(警察署)の打撃隊が鎮圧に当たるはめとなった。警備員を含めた住民13人が重傷を負い、安全員2人も肋骨を折る重傷を負った。

逮捕された突撃隊員15人は、安全部での取り調べで、犯行の動機をこう語ったという。

「故郷に帰ろうとしたが、一銭たりとも渡そうとしない(突撃隊)指揮部に強い反感を持っていた、酒をのんだら怒りと悔しさがこみ上げて八つ当たりをしてしまった」

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15人はコロナ規則を破った上に、住民はもちろん安全員にまで暴行をふるったことで、重罰は避けられないだろうと見られている。暴力を振るい多くの人を怪我させたことに対する相当の罰が下されても当然だが、彼らもまた、北朝鮮という抑圧体制の犠牲者であることに変わりはない。