日本の中井洽(ひろし)元拉致問題担当相が、北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使と極秘接触をしたことが波紋を呼んでいるが、今回の接触は3度目であり、既に2回接触していたことがデイリーNKの取材で明らかになった。
中国・長春で行われた今回の接触を中井氏は否定しているが、それまでの2回の接触はマレーシアのクアルンプールで行われたという。
先日、バリで行われたASEAN地域フォーラム(ARF)をきっかけに、北朝鮮は対話ムードに転じ南北対話や米朝対話が積極的に行われているが、今回の日朝極秘接触は明らかにこういった外交ラインとは別だ。その裏に、一体何があったのか。匿名を希望した情報筋は次のように語った。
「今回の会談だけではなく、米中韓が日朝間の水面下の接触をキャッチしていたのは間違いない。しかし、それほど神経を使っていなかったようだ」
核問題、6ヶ国協議など北朝鮮問題が山積みのなか、周辺国が日朝極秘会談に神経を使わない理由とは何か。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「中井氏は、既に拉致問題担当相ではない。また、会談を成功に導くためには何らかの対価を北朝鮮は要求するだろうが、今の菅直人政権にそれを約束できるほどの政治力はない。こういった背景から周辺国は大きな動きにはならないと見ていたのだろう」
一方、北朝鮮が極秘会談に応じてきた理由は何か。そして、なぜ今回の会談は明らかになったのか。
「宋日昊は、明らかに今回の会談情報が漏れることを前提に会っているとしか思えない。その思惑には、日朝国交正常化というよりも、富士見町の朝鮮総連中央会館の問題が絡んでくる」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面朝鮮総連中央会館の差し押さえに対する便宜−これこそが、北朝鮮側の狙いだと情報筋は指摘する。現在、朝総連中央本部の土地建物は、不良債権問題から仮差し押さえ中であり、進行中の裁判の結果次第では、完全に差し押さえられる危機に瀕している。この危機から脱するためにも、日本政府になんらかの便宜を図ってほしいといのが北朝鮮側の狙いだという。
「北朝鮮にとって、南北、米朝問題からすると日朝間の問題は、明らかに優先順位としては低い。今の首相が頻繁に変わるような日本の政治体制では、日朝国交回復など大きな問題について話したくても一体誰と何を話したらいいのかわからないだろう」
結果的に、日本側は極秘会談で大きな成果を得られず、逆に会談が公になることによって中井氏は「二元外交」の批判にさらされるという結果に終わった。外交の裏での秘密接触は当然あってしかるべきだが、会談が迄Iされたことと、何よりも結果を出せなかったことは大きなマイナスポイントだ。また、北朝鮮の日本に対する優先順位はさらに低まるだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面いうまでもなく、日朝間の交渉で今最も求められているのは、結果である。結果を出すためには、日本側は冷静で忍耐強い外交力を備えるべきだが、残念ながら今の日本外交からそのような姿勢は見られない。また、会談が迄Iされるという稚拙な情報管理能力も露呈している。今回の騒動について、同行した外務省職員の責任を問う声もあるが、そのような些細なことに執着することにどれほどの意味があるのだろうか。
今回の問題をきっかけに、日朝間問題のみならず国民が政府に求めるのは「腰を据えた外交」であることを今一度考え直すべきだ。