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北朝鮮・朝鮮労働党中央委員会の趙甬元(チョ・ヨンウォン)組織書記(党政治局常務委員)は、昨年制定された除隊軍官(退役した将校)生活条件保障法に基づき、平壌市内の除隊軍官の生活実態について調査するよう指示を下した。

社会的に地位が高く、安定した老後の暮らしが保証され、誰もが羨む存在だった除隊軍官だが、それも今は昔。生活苦に喘ぐ人が少なくないようだ。

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両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)の前日、恵山(ヘサン)市内に在住する除隊軍官に、名節(お祝いの日)の特別配給が実施されたと伝えた。その中身は、豚肉1キロ。金正日総書記から送られたプルゴギ(焼き肉)を食べながら涙を流す兵士の絵を彷彿とさせる。

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除隊軍官に対しては、大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中にあった1990年代後半においてすら、優先的に配給が行われていた。ところが、コロナ鎖国による貿易停止、度重なる封鎖令(ロックダウン)の影響か、最近になって待遇が急速に悪化。今年2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)の特別配給も行われなかった。

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配給の中身、品物の量や良し悪しが最高指導者の評価につながるお国柄だけあり、当局は、高まる除隊軍官の不満を無視できず、豚肉の配給に踏み切ったものと思われる。ただし、無料ではなく、市場価格の6分の1の3000北朝鮮ウォン(約48円)での廉価販売という形を取った。財政的な余裕の無さがうかがい知れる。

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北朝鮮の除隊軍官で、脱北して2018年から韓国に住む脱北者は、金正恩時代になってから、除隊軍官の扱いが急速に悪くなったと説明した。

「今の北朝鮮では除隊軍官の生活が保証されていない。金正恩氏が政権についてからは、住宅と職場を優先的に解決してくれていた慣行がなくなり、除隊軍官を冷遇する現象が現れている」

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また、国の防衛に当たっている現役の軍官に対しても、かつての上官の扱われ方を見て虚しさと懐疑を感じているだろうと同情を示した上で、軍の規律の緩みを招きかねないと判断し、太陽節をきっかけにして少しでも補おうとしたのではないかと、当局の狙いを解説した。