北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は16日、米韓合同軍事演習を非難し南北交流協力の断絶を示唆する談話を発表した。これを受けて、北朝鮮国内では貿易などに携わる幹部の間で「世間知らずの間抜けな放言だ」とする非難の声が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
両江道(リャンガンド)の貿易機関のある幹部消息筋はRFAに対し、「3年前の春はもう戻らない、とする談話を読んでみたが、ものごとの前後も把握できないままやたらと放言を吐き出す世間知らずな態度に言葉を失った」と語った。
金与正氏に対し、こうした批判が出るのは初めてではない。北朝鮮が昨年6月、韓国の脱北者団体による対北ビラ散布への報復として、金与正氏の主導により韓国との南北共同連絡事務所を爆破した際には、地方幹部から「生意気な青二才」などと批判する声が出た。
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前出の幹部はまた、「当局が合同軍事演習はわが国に向けた侵略戦争準備だと騒ぎ、激しく非難して国民の思想教育に利用するのは毎年のことだ。われわれは耳にタコができており、すっかり聞き流している。しかし(金与正氏が)前面に出てきて金剛山観光など南との経済交流協力を完全に絶つと脅すのを見て、怒りが込み上げてきた」と話した。
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平安南道(ピョンアンナムド)の貿易機関幹部もRFAに対し、「3年前、南北関係が雪解けを迎え、南北首脳が対面する場面をテレビと新聞で見て以降、幹部たちの間では経済が発展した南朝鮮と手を結び、いよいよ経済難を克服する日が来たと喜び合った。国民も南北経済交流が一日も早く成就し、暮らしが良くなるのを心待ちにしている」と説明。
その後に状況は一変し、「今われわれは経済制裁に加え新型コロナウイルス問題が長期化しながら、経済が最悪の状況に向かっている」としながら、「このような状況で唯一、われわれに手を差し伸べてくれそうな南との関係を断つなどと言う談話を見ると、彼女が正気なのか疑わしくなる」と話している。