北朝鮮の13歳少女を待ち受ける「緩慢な処刑」の残酷な日々

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北朝鮮・咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の南陽(ナミャン)労働者区。地名だけ聞いてもピンとこない読者も多いだろうが、豆満江を挟んだ対岸は、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の図們市だ。北朝鮮を間近で眺められ、アクセスもしやすいことから、中国の国内外から多くの観光客が訪れるところだ。

国門と呼ばれる図們税関の高さ11メートルのゲートの屋上に登ると、古ぼけた南陽の町並みや人々の営みが手にとるように見える。観光用として、税関のそばに建てられた朝鮮式の伝統家屋などが立派に整備された図們と比べると、より一層みすぼらしく見えてしまう。

そんな「格差」を感じながら貧しい暮らしを続けてきた40代男性と13歳の娘が脱北を図ったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

この男性は、国境地域に住む他の人々同様に、月に1〜2度、川を渡って中朝を行き来する密輸で生計を立ててきた。ところが、そんな暮らしは国のコロナ対策であっという間に崩れてしまった。

北朝鮮政府は昨年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐため国境を封鎖し、貿易を停止、国境警備を今まで以上に強化した。下手に密輸に手を出すと、最悪の場合は処刑されかねない状況で、父子はたちまち生活苦に直面した。

(参考記事:違反者は軍法で処刑…北朝鮮の厳重なコロナ対策

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にっちもさっちも行かなくなった男性は、脱北という重大な決断を下した。家を出たのは今月1日のこと。娘には、国境の川のそばに特定の場所に身を潜めて待っているから、午後6時までにそこにやってこいと伝えた。

娘は言われたとおりに川に向かったが、国境近辺は緩衝地帯で、許可なく近づけば無条件で銃撃するとの警告がなされていた。案の定、国境警備隊に捕まってしまった彼女は、「どこに行くのか」と詰問され、恐怖のあまり正直に答えてしまった。

「お父さんと一緒に渡江(脱北)することにした」

(参考記事:国境地帯で射殺される北朝鮮国民が急増している

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娘の身柄を引き受けた保衛部(秘密警察)は、彼女をおとりにして父親が身を隠している場所に向かい、父親も逮捕した。

取り調べで父親は「食べるものがなく飢えていた、他に方法が見つからず、死を覚悟して娘とともに脱北しようとした」と供述した。

父親は今月8日に、穏城郡保衛部の本部に身柄を移されたが、その姿を目撃した住民によると、前歯がすべて折れてなくなり、まともに歩けない状態だったという。受けた拷問の凄まじさがうかがい知れる。

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地域担当の保衛員は、コロナ非常防疫体制下で脱北しようとした、もはや生き残れないだろうと語ったという。運が良くても管理所(政治犯収容所)送りは免れないだろうということだ。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

父親と逮捕された娘は4日後に釈放されたが、面倒を見る者がおらず、ひとりで家に籠もり、飢えに耐えているという。通常、孤児になれば初等学院(孤児院)に収容されるが、情報筋は、親が脱北を試みたことから、収容されるかは疑問だと述べた。死ぬまで放置する「緩慢な処刑」と言っても過言ではないだろう。

ウイルスに感染して亡くなるのではなく、コロナ対策で死に追いやられるのが、北朝鮮のコロナ禍だ。