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北朝鮮と国境を接する中国・遼寧省の丹東。両国を結ぶ鴨緑江大橋の周辺には、中国の自動車会社のディーラーが多数店舗を構えている。いずれも、メインターゲットは北朝鮮の顧客で、中には「朝鮮総代理店」の看板を掲げる店舗もある。

実際、北朝鮮で見かける自動車の多くが中国製や日本製の中古車だ。だからといって、北朝鮮で国内生産されていないわけではない。北朝鮮で唯一、乗用車の生産を行っているのは、1999年に韓国の統一教会系の企業との合弁で設立された平和自動車だ。既に合弁は解消されたが、今でも中国からほとんどの部品を取り寄せてノックダウン方式で生産を続けている。

もうひとつの自動車会社は、平安南道(ピョンアンナムド)徳川(トクチョン)にある勝利自動車だ。1958年に旧ソ連からの援助で設立され、主にトラックやトラクターを生産してきた。年間生産能力は3万台だが、1990年代に入って旧共産圏からの援助が途絶えたことで生産に支障をきたし、1999年の年間生産台数はわずか7300台。その後、年間1万台生産回復を目標に掲げたが、達成されたかは不明だ。

この勝利自動車で事故が起き、配属されたばかりの10代の新入社員の尊い命が奪われたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

情報筋によれば、工場内で設備の問題により3人が死亡し、少なくとも5人以上が負傷して病院に運ばれたという。いずれも怪我の程度がひどく、命が危ぶまれる状態だ。死傷したのは全員が高級中学校(高校)を出たばかりの17歳の従業員だった。

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この現場では労働力が不足しており、このままでは、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で金正恩総書記が提示した「国家経済発展5カ年計画」に基づくノルマを達成できないこととなる。

工場幹部は処罰を恐れたのだろう。新入社員に設備や安全に関する教育を施さないままで現場に投入してしまった。設備は老朽化により電圧が不安定になっていたが、作業になれた従業員もおらず、充分な人員が確保できていない状態で、新人が慣れない操作を行っていた最中、急に電圧が上がったことで事故が発生した。

このように、安全設備が整っていない状態で、ノルマをこなすために無理やり作業を進めて、労災死亡事故につながる事例は枚挙にいとまがない。

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(参考記事:灼熱の溶鉱炉で5人死亡…金正恩「80日間戦闘」の残酷な実態

工場は、従業員にかん口令を敷したが、死傷者が多かったこともあり、あっという間に地域社会に広がってしまった。市民は「10代の若者が残念なことに亡くなってしまった」「事故は若者の責任ではなく、老朽化した機械と不規則な電圧のせい」などと言った反応を示している。直接の批判は避けつつ、遠回しで自己の責任は工場と当局にあると言っているということだ。

情報筋は、ノルマを課し命令を下すばかりで、何の支援も行わない当局の対応を批判した。

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「いくら自力更生をやると口で言っても、古い機械が新しいものになるわけではなく、来ない電気を来させることもできない。基本設備や環境がまともに備わっていない状態で、生産を増やせとばかり言うのだから、このような人身事故は起きるべくして起きたと言うべきだ」(情報筋)

ちなみに、多くの若者が命を投げ出して生産にこぎつけたトラックも、タイヤを入手できず出荷ができない状況となっている。

(参考記事:タイヤ不足で未出荷トラックがあふれる北朝鮮「5カ年計画」の現場