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金正恩総書記は今年1月の朝鮮労働党第8回大会で、「国家経済発展5カ年計画」を提示。その達成に向けて、党の地域の幹部を集めた講習会が行われた。ところが、その内容に批判が相次ぎ、さらには政府が固執する旧態依然とした経済システムにも批判が及んだと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

今月4日から6日にかけて、朝鮮労働党の各市、郡のトップを集めて開催された第1回市・郡党責任書記講習会。ここで強調されたのは、地方経済の運用にあたっての「党の指導」の強化だ。

(参考記事:金正恩氏「第1回市・郡党責任書記講習会」参加者と記念写真

平安北道(ピョンアンブクト)のある工場幹部は、市・郡党責任書記講習会の結論について、企業幹部の間で非難の声が相次いだと伝えている。

「経済を再生させるとして、史上初となる市・郡党責任書記講習会を開いて出した結論は、独善的で間違いだらけの党の指導の強化だった」
「党中央が経済を牛耳り、独断的な運営を行う従来の悪い慣行をさらに強化するものだ」
「党からの不必要な干渉を強化し、地域経済の一線に立つ企業幹部たちに足かせをして、何が経済再生だ」

さらには、経済、経営については門外漢の党幹部が、経営を指導するとなれば、経営はもちろんのこと、事務処理にまで事細かく口を出され、幹部の力を奪い、ひいては生産性に深刻な悪影響を与え、深刻な経済難をさらにひどくする、などと非難の声が収まらない。

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平安北道(ピョンアンブクト)の別の企業幹部も、企業経営における党の指導強化という方針に、強い反発を示している。

今の経済難を解消するにあたって最も必要なことは、党幹部の無謀で不必要な口出しをなくすことだと語るこの幹部は、専門家である企業の支配人の権限を拡大し、企業の自主性を活かすべきだと主張する。

また、党書記と企業幹部の間の軋轢と緊張が生産計画の障害になっていると指摘。さらには、党書記が計画未達成の事実を企業幹部を陥れるワナとして使っていると批判した。

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党幹部が企業経営に口を出す方式の源流をたどると、故金日成主席が1961年に打ち出した「大安の事業体系」に行き着く。国営企業の経営権を、社長にあたる支配人から党書記に移行させ、党の指導の下に企業経営を行うというものだ。党書記は、思想的にはプロかもしれないが、経営にあたってはズブの素人なのに、経営にあれこれ口を出すようになった。

党書記のトンチンカンなやり方に、支配人や技術者が助言などしようものなら、「技術主義」「機関本位主義」(エゴイズム)などと、逆に批判される始末。このような技術無視、思想優先の経営システムが、後の経済の低迷につながる。

(参考記事:【北朝鮮用語解説】大安の事業体系とは?

その弊害の例をひとつ挙げるなら、昨年起きた咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山での事故がある。台風の接近に伴い、その前に労働者を撤収させるべきと鉱山のイルクン(幹部)と労働者たちが声を上げたが、経験の少ない党委員長は、現場の声を無視し、操業を続けさせた。それにより、多くの犠牲者を出す大事故へと繋がった。

(参考記事:北朝鮮最大の亜鉛鉱山、台風で坑道すべて水没し死者多数

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党幹部の専横がどのような悪影響を及ぼすかについては、デイリーNKとのインタビューで、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)に住むある市民が述べたこの一言に凝縮されている。

「(国は)何もしないことこそが人民を助けることだ」

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】地方住民は党大会に極めて冷淡な反応