「やっと稼げる」北朝鮮の薬物密売人が”狂喜”する政府の経済対策

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農業に欠かせない化学肥料だが、北朝鮮は長年その不足に苦しめられている。北朝鮮が1年間に生産できる肥料の量は50万トンだが、これは需要の3分の1に過ぎない。

不足した肥料を補うための人糞集めは新年の「恒例行事」となり、肥料工場の周辺では各地の協同農場から担当者が数カ月間、肥料の受け取りを待ち続ける光景が見られる。ところが、今年は少し変化がありそうだ。

(参考記事:一人あたり500キロの人糞集めから始まる北朝鮮の新年

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、今月20日に、国境地域の農場に優先して肥料を割り当てよという指示が下された。工場の前で長期間待たなくとも肥料を受け取れるようになるかもしれないのだ。

ところが、どういうワケかこの情報に、北朝鮮の覚せい剤密売人が狂喜しているという。いったい何が起きているのだろうか。

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道内の恵山(ヘサン)、三池淵(サムジヨン)、普天(ポチョン)など国境に面した地域の各農場は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)にある興南(フンナム)肥料工場にトラックやトラクターを派遣する用意を進めている。

このような地域優遇策は、コロナ対策の弊害により高まる地域住民の不満を抑える措置と考えられる。

当局は今年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために、国境を封鎖し、貿易を停止、密輸を取り締まるために国境警備を強化した。密輸依存型経済のこの地域は深刻な不況に襲われ、頻繁なロックダウン、餓死者発生、国境警備強化のために新たに派遣された兵士による暴力などに対し、地域住民の不満は溜まる一方だった。

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肥料優先配布の知らせに歓喜しているのは農民だけではない。

「農場が咸興に肥料を受け取りに行くという話に、国境地域の麻薬(覚せい剤)ブローカーたちが大喜びで歓声を上げている。早速、咸興のブローカーに電話で連絡を取り、密かに取り引きを急いでいる」(情報筋)

咸興には咸興化学工業大学があり、ここから輩出した技術者の一部は興南製薬工場に配属されるが、同工場は覚せい剤を製造してきたことで知られる。覚せい剤づくりが地場産業の一つになっていると言っても過言ではない。

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各地の密売人たちは、この「名産品」を受け取りに行こうにも、コロナ対策で地域間の移動が規制されていて、思い通りにいかない。しかし「錦の御旗」を掲げて肥料を受け取りに行く農場のトラックは当然その対象にはならない。そこで、あらかじめ商談を成立させておき、ドライバーに運び屋になってもらうというのが、ブローカーの算段だ。

ドライバーにとっても絶好の稼ぎ時となるため、派遣対象に選んでもらうため、農場の幹部にワイロを渡す現象まで起きているという。また、品薄で価格が10倍になったことで手が出せなくなり、禁断症状に苦しんでいた中毒者たちも大喜びしているだろう。

ちなみに、国境警備強化のために両江道に派遣されている朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第7軍団の本来の駐屯地は咸興だが、今回の動きに便乗して一儲けしようと企むかもしれない。

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