平壌育ち「キャリアウーマン予備軍」が受けた残酷な仕打ち

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北朝鮮で、大紅湍(テホンダン)と言われて、人々が思い浮かべるのはジャガイモだろう。

北朝鮮が大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中にあった1990年代後半、故金正日総書記がこの地域のジャガイモ栽培を進めた。この「ジャガイモ革命」は成功を収め、大紅湍はジャガイモの名産地として知られるようになった。

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名前こそ知れ渡っているものの、山奥でインフラも整っておらず、冬は極寒となる僻地だ。あまりの生活環境の悪さに、国の命令を受けて送り込まれた除隊軍人も次々に逃げ出してしまった。

(参考記事:北朝鮮で深刻な人手不足、頼みの「除隊軍人」も次々失踪

そんなところに、平壌出身の20代女性4人が「志願して」向かい、絶望の淵に立たされた。一体何が起きたのか。その顛末を、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

4人は平壌の有力者の娘で、将来の幹部を目指して三池淵突撃隊に入った。突撃隊とは半強制の建設ボランティア部隊だが、ここでのキャリアが認められれば、朝鮮労働党への入党の推薦書がもらえる。

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それから4年たった先月。突撃隊の党委員会の幹部は、彼女らにある提案をした。

「彼女らが大紅湍総合農場行きを志願するように党は思想的な説得を行った。突撃隊の党委員会は、元帥様(金正恩総書記)がご心配されている大紅湍総合農場の幹部の陣地を作るために送り込むものだと思想的に懐柔した」(情報筋)

彼女らに拒否する選択肢はハナからなかった。断れば入党が認められず、三池淵突撃隊での4年間のキャリアがパーになるばかりか、党に対する裏切り行為とみなされ政治問題化するリスクすらあった。

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(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

ましてや、故金正日氏が次のように言及しているところに行かないという選択はありえないだろう。

「大紅湍郡は党の意図に合わせて、ジャガイモ栽培を基本に推し進めなければならず、ジャガイモ栽培にすべての力を集中しなければなりません。」

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上述の通り、農村は誰も行きたがらないところだ。ましてや、比較的豊かな首都・平壌を後にして農村に「都落ち」するのは、何か間違いを犯して革命化、昔風に言うところの島流しの処分にあった場合くらいだろう。

農村での暮らしは貧しい上に、コロナ禍で生活苦に拍車がかかり、農場から逃げ出して働きに出る人が後をたたない。しかし、機械化が遅れている北朝鮮の農業において、人口流出は生産高の減少に直結する。

当局は、農村人口の補充に加えて、テーマソングと合わせて人気を集めた1993年の映画「都会の娘が嫁に来る」を地で行くような行動が、プロパガンダの格好のネタになると考えたのだろう。

(参考記事:コロナ不況で食い詰めた人々が目指す北朝鮮の「黄金郷」

彼女らに拒否する選択肢はハナからなかった。断れば入党が認められず、三池淵突撃隊での4年間のキャリアがパーになるばかりか、党に対する裏切り行為とみなされ政治問題化するリスクすらあった。ましてや、故金正日氏が次のように言及しているところに行かないという選択はありえないだろう。

「大紅湍郡は党の意図に合わせて、ジャガイモ栽培を基本に推し進めなければならず、ジャガイモ栽培にすべての力を集中しなければなりません。」

結局、4人は首を縦に振らざるを得なかった。志願した翌日の先月28日、4人は大紅湍に向かい、農場の作業班の管理イルクン(幹部)として働いているという。

4人の親たちがそのことを聞かされたのは、彼女らが大紅湍に発った後だった。

「今まで娘を入党させるために経済的支援を行ってきた親たちは、娘が地方に配置されたことに絶句し、涙を飲むしかなかった」(情報筋)

4人の大紅湍行きについての報告を受けた党は、「美しい行い」として、通常は2年の候補党員(見習い)期間を経ず、すぐに正党員の資格を与える指示を下した。来月には正党員の資格を審査する会議が開かれる予定だ。