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北朝鮮住民の考え方は、すでに1990年代中盤に大きく変化した。1990年代中盤以前までは情報統制と偶像化政策で『共和国(北朝鮮)が人民の楽園』という思考が支配的だった。故黄長ヨプ前労働党秘書は「大飢餓の時には、飢え死にしながらも将軍様(金正日氏)を心配をするほど北朝鮮住民は、思想的奴隷状態にあった」と話した。 

配給が中断され、数百万人が飢え死に、朝中国境を通じて商売が日常化しながら、「お金が最も大切だ」という認識が広がった。1990年代中頃を基準とすると、それ以前は『統制型人間』だったが、それ以後は『生存現人間』に変わったと脱北者は話す。 ここに2009年貨幣改革は住民たちを『体制不満型人間』に変化させたという証が今回の取材結果で得られた。

中国琿春に居住する北朝鮮、慶源郡(キョンウォングン)(旧セビョル郡)出身の夫婦、キム・ヨンホ氏とイ・インスク氏(両名とも仮名)は、取材陣に「最近は、取り締まる側が強く出ると、逆に問い詰めて襟首を掴んだりする。で、検閲員に『おい!私らにどうやって生活しろというのだ。あんたが、食べさせてくれるのか?」と反撃する」とのことだ。

夫婦によると、住民たちが「王族が主席団に座っている」と話しているという。現場で、住民を取り締まる保安員と保衛員は、下っ端に過ぎず、本当の泥棒は平壌特権階級だという皮肉だ。

キム氏夫婦は、逮捕されない限り、北朝鮮に帰る意思がない脱北者ゆえに、比較的自由に発言できる。しかし、貿易のために中国へ来た新義州(シンウィジュ)の住民であるイム・ソンe氏も、貨幣改革以後に住民考え方が変わったと話す。彼は、自ら自分が労働党員であり、国家の恩恵をたくさん受けたと話した。

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「貨幣改革以前は、私のような人(党員など)は特別供給を受けた。だから、外の世界についても、ある程度分かりながらも国家に感謝していた。しかし、貨幣改革でお金を多く失った。それを考えれば腹がたつ」と話した。

イム氏は「苦難の行軍(1990年代大飢餓を意味する北朝鮮の公式用語)後に、生活が安定した時期が2005年だ。市場で商売をして生計を立てた。しかし、血と汗で稼いだ金は貨幣改革で吹っ飛んだ。拒否感がないといえば嘘になる。誰が国について、いい印象を抱くのか」と非難した。

引き続き「最近、人々の意識は変わった。 口では将軍様と言うが、心の中では違うことを考える。貨幣交換以後は、思考方式が180度変わった」と話す。彼は、大多数の住民が偽りの忠誠心を持っているのか?という質問に「みんな、そうだ」と答えた。

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北朝鮮国境警備隊士官長(特務商社-重大食糧、被覆、物資供給担当)に勤めるイ・ヨンファン氏(仮名)は、取材陣に「昔は『ア』と言えば『ア』と言っていたが、今はそうじゃない」と証言。最高指導部に不満があるのかという問に対しては返事をためらった。

彼は、インタビュー前日の27日に密輸船に乗って鴨緑江を越えてきた。明け方に帰らなければならない。緊張した様子が伺えた。「北朝鮮は、本当に大変だ。韓国や中国の情報は、私たちが一番はやいが、それを当局はよく思うわけがない」と話した。

北朝鮮の経済事情が悪いことを認めながらも、彼は当局に対する批判を自制しなければならない立場にあった。江原道(カンウォンド)の40代女性党員イ・ヨンシル氏は「国は、住民たちをどうやって食べさせようとしているのかが、分からない。党員の思想は本当に良い。今、私たちは飢えているが、国の財政が厳しいので、党員たちが克服しなければなければならないと行動している」と話した。

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ただし、この女性も「貨幣改革以後の民心はよくない。(住民たちが)国家に対して不満を吐き出している。残念な気持ちから来るようだ」と体制に対する露骨な不満ではないと主張した。

合法の資格で中国延吉で就職し仕事をしているチ・ソンw氏(仮名)は、偶然出会った取材陣に金正日と呼び捨てにすると、すぐさま「金正日同志」と呼びながら、称賛の言葉をならべた。

貨幣改革以後の住民意識変化に対して、北朝鮮工科大学教授出身のキム・ホングァンNK知識人連帯代表は「北朝鮮に民主化の風が吹くほど意識が成熟されていない。だが、貨幣改革を経て外部情報が入り、自分たちの境遇をわかっている。国家が配給を与える時は、国家の悪口を言えなかったが、配給も与えず、さらに個人の金まで奪っていくので、保衛員も取り締まりをしにくい雰囲気」と分析した。

いずれにせよ、当局に対する批判の取り締まりは、貨幣改革以後、比較的緩んでいる。地下鉄や公共の場所でも『国家が何をしたのか?腹が減って考えることもできない」と話している。あまりにも露骨だとか金正日一家に関することを除けば、不平程度では逮捕されないと話した。

平城で商売を営む40代の女性は、「バスや何人かが集まるところで『国家の言うとおりにしていると、できることもできない。国家が何をしてくれた。配給も与えず、大声でさけぶだけか』と話している。今は普通にそんな話が出る」と話した。

パク・ヒョンジュン統一研究院選任研究委員は「私的な対話だが、公共の場で国家に不満を浮?キということは、それだけ住民の不満が高く、取り締まる側も、これを黙認する環境が造成されていることを意味するようだ。貨幣改革は、中央政府の誤りが明確なことから、そのような不満が表面に出てくる可能性は充分ある」と話した。

2010年統一研究院人権白書によると、『表現の自由の侵害』分野自体が存在しないのが北朝鮮だ。貨幣改革以後の住民不満が高まるなかで、一部の政府批判が許されているという点は示唆することが多い。

大韓弁護士協会は『2010北朝鮮人権白書』を発刊し、脱北者200人を対象にアンケート調査を実施したが、その結果、33%が意思表明の自由が抑圧されることを最も重大な人権侵害として選んだと、明らかにしている。

これについて季刊『時代精神』金英煥(キム・ヨンファン)編集委員は、「このような批判を政府が許容したのではなく、取り締まる責任者の不満があまりにも高いので、諦めたという側面が強い。表現の自由が広がるというより、中央政府の行政空白が大きくなったと見るべきだろう」と分析した。

北朝鮮は、貨幣改革以後、3人以上が集まること自体を禁じたという。不満が集団化されるのを北朝鮮当局は警戒している。

<金正日と金正恩に対するインタビュー対象者らの言及>

春居住在住の夫婦
「王族が主席団に座っている」
前南浦造船所幹部
「幼い子供(金正恩)に何が分かるのか」
平城の40代女性
「若い人(金正恩氏)が何をするのか」
江原道の40代女性
「将軍様(金正日氏)の評判はいい」「下の幹部のせいで国がこうなった」
平壌製紙工場の労働者
「南朝鮮はいい暮らしをして、私たちの生活は苦しい。私は(金正日は)好きじゃない。
平南、徳川の農場員
「若い人(金正恩氏)は腹が出ていて怠け者みたいだ」
海州市の薬販売商
「国民は無関心、インテリは心のなかで別のことを考える」
咸北食品工場の労働者
「金正日に対する不満話にもならない」
国境警備隊特務商社
「以前には「ア」と言えば全部「ア」と言ったが、今は違う」
新義州の40代の密輸業者
「あの父にあの息子だ。希望もない」
70代の朝鮮族
「貨幣改革の3日間は共産主義、その後は世襲封建主義に戻った」

咸鏡北道製紙工場電気修理工のチン・キテク氏(仮名)は、「貨幣改革以後、3人以上が集まるなと言われた」と話した。不満が集団化されるのを防ぐ目的だ。

金正日、金正恩について話すことは北朝鮮でタブーだ。このような雰囲気は相変わらずである。しかし、住民によると、金正日に対する率直な思いは違うとのことだ。

平南(ピョンナム)順天(スンチョン)で商売をするイ・ヨンヒ氏(仮名)は、「将軍様が、現地指導するのを見ると、天領を越えて握り飯を食べながらも現地指導をすると教えられ、一般国民は、我が将軍様が、どれほど労苦をしているのかと思う。しかし、少し知識があって聡明な人は、心のなかで違うと考える」と話した。

彼は「今の北朝鮮で将軍様を傷つけることは容認されない」と話した。彼は「金日成は、人民を第一に考えた。しかし、今は先軍政治と軍隊が厳しくて恐ろしい」と暗に先軍路線を批判した。

情報当局は、最近記者との懇談会席で「北朝鮮幹部は、金正日と一つの船に乗っていると考えるようだ」と話す。幹部が、金正恩と運命共同体という意識を強く持っているといことだ。(北朝鮮の天安艦、延坪島)挑発も「金正恩のリーダーシップを確保する次元だ」と統一部は分析した。

中国集安で北朝鮮住民を助けている朝鮮族宣教師のイ・キルジャ(仮名)さんは、「キム大将(正恩)が後継者に決まる前に、中国に来て幹部らと会ったが、特別な素振りを見せず、話のなかで『そのように(3代世襲まで)するのか』と話していた。今でも阜?ォは、青年大将を敬って云々と言うが、裏では『三代世襲は簡単じゃない』と話す」と伝えた。

瀋陽で、会った南浦(ナムポ)製鉄所の物資供給源出身のキム・ソンファ氏(仮名)は「言葉では言えないが、(後継者金正恩のような)幼い子供に何を分かるというのか。贅沢三昧しながら育って何をするのか。悪口は言えないが、いいと話す人もほとんどいない」と言い切った。

北朝鮮が全面に出す強盛大国に対しても、実際信じる人はほとんどなかった。「今、飢えているのに、来年に強盛大国なるなんて誰が信じる」という反応だった。しかし、政府がすることだから見守るしかないとも言った。

改革開放の可能性に対しても「低い」という意見が大部分だ。最近、拡大する朝中経済協力にも、住民たちは実質的な開放は難しいと見ている。また、自由がないという点でも中国と北朝鮮の最も大きい差という意見もあった。