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金正日の7回目の訪中報道を見ながら、もしかしたら今回が最後の訪中になるのではという思いを抱いた。

最後の訪中の根拠は?と聞かれれば、いささか困る。しかし、金正日の動向を長くウォッチしてきた一人として金正日の今回の中国での歩みは、過去6回と違いがある。

筆者は、金正日が南陽から図們を経て訪中したと聞いた際に、昨年5月と8月の訪中の延長線上での訪中と考えた。しかし、そうではなかったようだ。金正日は、何かしらの決意を持って中国に行ったようだ。しかし、その結果は芳しくなかった。

その内容とは、軍事分野に関するものと思われる。あくまでも推測だが、金正日は中国に戦闘爆撃機や新型戦闘機の提供(無償)を要求したのだろう。しかし中国にしてみれば無償であれ有償であれ金正日に新型の戦闘機や爆撃機を与えることは難しい。アメリカの存在がそれを許さない。中国は、米国の台湾への武器を援助を強力に批判している。ところが、中国が北朝鮮に武器を渡せば、アメリカを非難する大義名分が失われる。

中国にとって台湾問題と北朝鮮問題を天秤に掛ければ、死活的な国益がかかっているのは台湾だ。胡錦濤が「一つの中国」の外交路線に傷をつけてまで金正日の頼みを聞き入れるのは難しかったはずだ。

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一部では、中国が北朝鮮の地下資源を大量に採掘し、大型の中朝経済協力が既に行われていると言われているが、実際はそうではない。中国の北朝鮮への対応は予想より少なく、燃料や食料などはせいぜい「死なない程度」の量を支援しているに過ぎない。その他では中朝の貿易があるくらいだ。

中国の支援は周恩来の時代からこの程度だったという。黄長ヨプ・元労働党国際書記の言葉を借りれば、「1年に1億ドル程度、それも主に航空機のガソリン?ウ償提供」とのことだ。中国政府が北朝鮮内に作ったテアンガラス工場を除いては、政府レベルでの支援は少なく、主に省単位、中小企業の対北朝鮮投資が数件あるだけだ。

確かに以前と比べて中朝経済協力は活性化している。しかし実際に行われている協力と、今後の希望的な経済協力が「これから、そうなってほしい」という願いと一緒になっている。開城工団は北朝鮮にとって、依然として最大の経済協力である。いくら金正日が北京で「中国は改革開放で良くなった」と騒いだとしても中国式の改革開放は取れないだろう。

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中国指導部は、何が利益であり、何が損なのか正確に知っている。天安艦事件で中国が、国連安保理の議長声明で事件の当事者の北朝鮮を明記しなかったのは、金正日をかばうためでは無く、「朝鮮半島の現状維持」が中国の国益に正確に合致するからである。我々としては、天安艦・延坪島事件で、即座に金正日政権に報復出来なかった事が、結局は国家に損害をもたらしたのだ。

いずれにせよ、筆者は今回の訪中で金正日が考える中朝関係が、中国が考える中朝関係とは、根本的に異なっているという事実を明確に認識したと考える。だからこそ、今回で最後の訪中になるかもしれないと述べているのだ。

中朝が「脣亡ぶれば齒は寒(さむ)し」の関係であることは両国も認めている。だから金正日が中国に行けば、政治局常務委員までも総出動するのだ。しかし、両国間の優先順位を確認すると、温度の違いがはっきりと浮黷驕B

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金正日は、両国間の関係を党と党、軍事戦略的な関係を基本的に見ている。簡単に言うと、金日成−毛沢東時代の関係を中朝関係の基本と見ているのだ。

金正日は、昨年の5月と8月、今年の5月の訪中でも、金日成−毛沢東時代の関係を改めて強調するプロパガンダを用いた。昨年の訪中では、金日成が通った中学を訪問し、中国共産党と金日成の東北抗日連軍時代の名残が残っている吉林省で胡錦濤主席と会い、金日成−毛沢東が共に紅楼夢(毛沢東が最も好きな劇)を北朝鮮が製作し、美人女優を連れて訪中した。(紅楼夢は上演せず)今回も牡丹江市の金日成の革命遺跡を最初に訪れた。そして揚州に向かい江沢民前主席と会う事で、代を引き継いだ血盟関係を強調した。

金正日としては、中国の支援は朝鮮戦争の時のように1)軍事支援 2)反米をベースにおいた政治・外交的対応 3)経済支援である。これが、金正日が考える中朝友好協力関係の基本的な枠組みであり、状況に応じて、その順位が入れ替わる。しかし、金正日は軍事支援こそが最重要だと考えている。

金正日としては、食料よりも軍事支援が優先されるべきで、重要項目は戦闘爆撃機、戦闘機である。北朝鮮の主力機ミグ21、19などはすでに老朽化しており、韓国のF-15、F16戦闘機の相手にならない。在韓米軍が保有するステルス機は、実に恐ろしい存在である。

例えば、西海5島で北朝鮮が挑発をすると、状況によっては韓国の戦闘機、戦闘爆撃機が出撃するようになっているが、北朝鮮空軍もこれに対応しなければならない。しかし、保有中のミグ機では対応出来ないというのが、金正日の判断であるようだ。従って、中国の最新鋭戦闘機、戦闘爆撃機が切実である。

さらに、金正日としては北朝鮮が中国に代わって米国に対立しているにもかかわらず、中国が軍事支援を惜しむことに忸怩たる思いだろう。中国の経済支援は、優先順位ではその次の問題だ。今回、金正日は決心をし3千キロを走り、江沢民前主席まで訪ねる誠意を見せたのだ。

しかし、中国の立場では、中朝関係は共通点と相違点がある。北朝鮮が戦略的要衝地であることは間違いない。東海に進出することは極めて重要だ。現在、東海の主人は南北で大きな違いがある。東海NLL以南は大韓民国、NLL以北は北朝鮮。

しかし、水面下の潜水艦の数字で見れば、米国、ロシア、日本、北朝鮮、韓国の順である。中国の潜水艦がここに割り込む為には、北朝鮮の羅津港が必要となる。中国は羅津港を利用して東海に進出し、米国、ロシア、日本と競争したいのである。もちろん、初期には中国東北地方の穀物を海路で中国の南方に輸送することが、はるかに重要である。

金正日としては、羅津港を中国に貸す事で、膨大な対価を得る事が出来ると考えている。

しかし、中国は北朝鮮を戦略的要衝地として重要視しているが、代を継いでの「毛沢東−金日成」の様な付き合いは必要ないと考えている。改革開放から30年を超え、今年3月1日にはWTO加入10周年を迎えている。

中国からすれば、朝鮮労働党との関係も重要だが、国際規範に沿った国家関係を構築したいと考えているはずだ。金正日がすぐにでも中国式の改革開放を選択し、体制の共通性が確保すれば、朝鮮半島の現状維持と両国間でより多くの肯定的な関係が構築出来るのも関わらず、金正日は核実験、天安艦・延坪島事件など、朝鮮半島で軍事緊張を高める愚行を取っている。

胡錦濤と金正日の間には、この様な到底埋める事が出来ない溝が存在する。北は朝鮮半島の軍事緊張を高める事で、体制の存続が可能となり、中国は国際規範に沿って行動する事がより発展する事となる為、これが中朝関係のジレンマである。

昨年も要請し、今年の要請も拒否されていることから、今後訪中する可能性は極めて低いと思われる。

金正日に残された選択肢は、核実験、ミサイル発射、西海5島への挑発などで、軍事的緊張感を高める事で、中国に北朝鮮の軍事的重要性を認識させ、アメリカと「朝鮮半島平和協定」の交渉を強制させるのだ。今年度の後半に北朝鮮の軍事挑発が起きる可能性が高い。