先月20日と24日、北朝鮮・両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)で、脱北して中国に暮らしていた女性3人が北朝鮮に再密入国しようとして逮捕される事件が起きた。が、うち1人は中国で新型コロナウイルスの陽性判定を受けていたことが判明した。
また、事件との関係は不明だが、事件後の先月27日から三池淵と道庁所在地の恵山(ヘサン)が完全封鎖状態に入ったと伝えられている。
(参考記事:「死ぬなら故郷で」…北朝鮮「中国で陽性判定」の女性を銃殺か)相次ぐ密入国事件に当局は国境警備をさらに強化している。韓国デイリーNKは、両江道の内部情報筋を通じて、社会安全省(警察省)が先月25日に、現地で配布した布告文の写真を入手した。タイトルは「北部国境封鎖作戦を支障を与える行為をしないことについて」というものだ。
その概要は次のようなものだ。
(1)国境封鎖線から1〜2キロの地域を境に厳重地帯を設定する
(2)国境沿いの道路、鉄道の夜間運行を禁止する
(3)厳重地帯や国境沿いの道路、鉄道に許可なく接近すれば人も動物も無条件で銃撃する
(4)北部国境一帯に設定された行動秩序を厳格に守り、祖国の安全と人民の安寧を死守すること
金正恩党委員長は、新型コロナウイルス対策の防疫ルール違反者には軍法をもって臨むよう関係当局に指示しており、布告文の「無条件で銃撃」が、それに沿ったものであるのは間違いない。
(参考記事:「現場を見た男女は気絶した」金正恩、北部国境で軍人虐殺)
また、地帯への立ち入りと物品の搬入には、公民証(身分証明証)と共に公的機関の許可書を携帯を求めている。道路、線路の通行禁止は5月から9月までは20時から翌朝5時まで、10月から4月までは18時から翌朝7時までだ。新型コロナウイルス対策が長引くことを念頭に置き、夏季と冬季の時間区分まで細かく決めたものと思われる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩党委員長は、脱北に対して射殺を含めた厳しい対処を取るように指示している。また、国家保衛省は今年2月、辺防部隊(国境警備隊)に対して、新型コロナウイルスの流入を防ぐため、中国人に国境付近での活動をさせるな、さもなくば銃撃するという通知文を送り、実際に行動に移している。
(参考記事:北朝鮮が国境で中国人を射殺…中国側部隊は完全武装で示威行動)社会安全省はこの布告について「共和国(北朝鮮)領域のすべての機関、企業所、団体、公民に適用する」としている。
地元住民からは、長引く国境統制の強化で生活が苦しいと、次のような声が上がっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「伝染病(新型コロナウイルス)がなくなるまで沿線(国境)封鎖を定期化するのではないか」
「国境警備隊と内陸地方の軍隊と中央党(朝鮮労働党中央委員会)のイルクン(幹部9まで三重で封鎖しているので、息が詰まって死にそうだ」
「封鎖だけするのではなく、配給をするなど糊口をしのぐ程度の措置は取るべきではないか」
両江道では、長く厳しい冬を生き抜くための物品を買い込む時期となっているが、薪1立米の価格が、布告の後に1.8倍値上がりした。住民の間ではさらに2倍以上になるだろうと囁かれている。
(参考記事:北朝鮮、燃料にも「格差社会」の波…石炭より薪が人気)北朝鮮は未だに国内における新型コロナウイルスの感染者発生を方式に認めていないが、感染が拡大している可能性を示す出来事が起きている。
その一つが、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)でのクラスター発生だ。先月28日の青年節を祝うダンスパーティに参加した市内の大学生が次々に発熱症状を訴え、重症者40人、軽症者120人を出す事態となったのだ。最も近い中国との国境から300キロ近く離れた地方でも、感染状況が深刻化していることが考えられる。
(参考記事:北朝鮮「公認ダンスパーティ」で巨大クラスターか、重軽症160人)