北朝鮮女性、秘密警察の性暴力に耐えかね脱北するも射殺される

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残念ながら、女性に対する性犯罪は世界中どこの国でも起き続けている。だが、その様相は国ごとに異なる。

例えば、韓国ではソ・ジヒョン検事の告白をきっかけに 性暴力を告発する #MeToo の流れが生まれ、演劇界の大物、ノーベル文学賞候補と目された作家、複数のリベラル政治家らが社会的に糾弾される事態となった。かつて、性暴力は女性の「落ち度」によるものとする風潮が根強く、被害女性が苦しめられてきたという歴史が背景にあるが、日本も決して例外ではない。

北朝鮮から脱北して韓国にやって来た女性たちの間でも、#MeToo が起きている。韓国に来たばかりの不安な心理や社会的に弱い立場を利用するという卑劣なものだ。被害女性の間で多く聞かれるのは、韓国に来てようやく性犯罪が犯罪だと知ったということだ。北朝鮮の人々は、女性男性を問わず、性暴力や女性の人権に関する教育を受けていないことがその理由と言われている。

(参考記事:韓国「身辺保護官」からの性暴力に苦しめられる脱北女性

金亨稷(キム・ヒョンジク)師範大学作家班を卒業後、出版社に務めながら朝鮮作家同盟所属の詩人として活躍していたチェ・ジニさんは、1998年に脱北、韓国で暮らすようになって3年も経ってから、30年前に自らの身に降りかかった「事件」が、性暴力であったことを認識したと告白している。

(参考記事:北朝鮮女性が脱北してようやく気づく「それは性暴力だった」

このように、上官や上司が部下の女性に接近し、何らかの条件と引き換えに、あるいは脅迫して、性暴力を加える事例が後を絶たない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、性暴力がひとりの女性を死に追いやった事例を紹介した。

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被害者は、咸鏡北道の茂山に住んでいた34歳の既婚女性、キムさんだ。彼女は、過去数年に渡って保衛部(秘密警察)の情報員、つまりスパイとして活動してきた。しかし、それは自ら望んだものではなく、反探課所属の保衛員に頻繁に呼び出され、性暴力を受けていたことによるものだったようだ。

キムさんが拒絶しようとするたびに保衛員は「お前が違法な密輸をしたことを上部に全て報告して監獄送りにしてやる」などと脅迫したという。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

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情報員の講習があった先月4日の夜にも、キムさんはこの保衛員に事務所の隣にある取調室に呼び出された。拒もうとするキムさんに対して保衛員は「お前は間違いなく教化所(刑務所)送りだ」などと脅迫して、性暴力をふるった。

繰り返される性暴力に耐えかねたキムさんはついに7月10日の午後11時ごろ、脱北を図った。かばん2つを背負って豆満江に飛び込んだが、10メートルほど泳いだところで国境警備隊に発見され銃撃を受けた。キムさんは翌日、遺体となって発見された。

キムさんは普段から母親に「あいつ(保衛員)のせいで死にたい」「どこか見えないところに逃げたい」と話していたことから、遺族は保衛員の性暴力のせいだとして、怒りに震えている。母親は中央に信訴(違法行為の告発)して保衛員に復讐すると怒り、キムさんの夫も保衛部に激しく抗議している。

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「娘が家を出る前に言ったことを覚えている。罪のない娘を脅迫して性暴力をふるい、死なせた張本人が反探課の保衛員だ。娘のかたきを討つまでは死ねない」(キムさんの母親)

北朝鮮の刑法には、未成年者との性行為に対する刑罰が定められている。刑法第295条「未成年性交罪」には「15歳未満の未成年との性行為は懲役5年以下の労働教化刑に処す。同類の前科のある者は5年以上、10年以下の労働教化刑に処す」と明記されているが、成人女性や児童に対する性暴力を処罰する条項は存在しない。実際に処罰は行われるものの、量刑は最高指導者の方針や住民感情により左右されるため、かなり幅があるという。

(参考記事:北朝鮮で多発する児童への性暴力、量刑基準は不明確