金与正氏が「韓流狩り」を指示…『愛の不時着』も標的か

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北朝鮮はかねてから、一部の国で制作された一部の作品を除き、外国の映画やドラマを違法映像物と位置づけ、取り締まりを行ってきた。そのターゲットの筆頭と言えるのが、韓流ドラマや韓流映画である。

使われている言語が北朝鮮と同じであるだけに、韓流の北朝鮮国内での拡散力は極めて強い。それだけに、北朝鮮当局は忌々しく思っているようだ。同国の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は3月、「虚偽と捏造に満ちた虚しく不順極まりない反共和国(北朝鮮)映画とテレビドラマ」であるとして、日本でも大ヒット中の『愛の不時着』にも非難の矛先を向けている。

金正恩党委員長はこれまで、違法映像物の取り締まりについて繰り返し指示を出してきたが、どうやらその役割が、妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長に移った可能性がある。このところ、韓国に対する強硬策を手動している金与正氏は、長らく党宣伝扇動部に籍を置いてきた。同部は国民の思想統制を担う部署でもあり、金与正氏が「韓流狩り」を指揮するのは不自然なことではない。

両江道(リャンガンド)の現地情報筋は韓国デイリーNKの電話取材に対し、「先月27日、金正恩同志が違法映像物と違法図書を根絶やしにすることに関する指示を出してから7年を迎えたのに対し、『6・27常務』の役割をいっそう強化せよとの方針が金与正同志から下された」と伝えた。ここで言われている「常務」とは、関係各機関の要員らで構成されるタスクフォースのことだ。

情報筋によれば、金与正氏は次のような危機感を示したという。

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「違法映像物と不純図書は住民の中に自由化の風を吹き込み、思想的変化を引き起こして反抗心を抱かせている。群衆は外国映画や外国図書にすっかりはまり、表面的には党に従いながら、内心では別の考えを持って生きている」

金与正氏のこの現状認識は的確なものだ。北朝鮮国民の多くは、密かに拡散した韓流ドラマなどを通じ、国の外には「別世界」が存在することを知り、「自由とは何か」を考えるようになっている。だからこそ、北朝鮮当局は拷問や処刑など極端な方法まで用いて摘発に取り組んできたのだが、それでも韓流を根絶やしにできていない。

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そのような取り締まりの欠点について金与正氏は、違法映像物や不純図書を隠れて見たり、流布したりした者たちが摘発されても、司法機関と内通してワイロを使い、罪を逃れていると言及。「常務が問題の深刻さを自覚せず、与えられた役割をまともに遂行できていない」と強く批判したという。

そのうえで金与正氏は、各道・市・郡の朝鮮労働党委員会の宣伝部長らを常務の責任者に据え、常務を構成する保衛部と安全部、検察所、人民委員会、勤労団体の人員らを総入れ替えせよと命じたとのことだ。

情報筋によれば、「当局は常務の再編成を今月4日までに終え、5日から党創立75周年に当たる10月10日までを非社会主義排除の集中活動期間に設定した」という。

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金与正氏はまた「外国から不純な映像や書籍などを持ち込み、流布させて非社会主義的現象を助長する者らは決して許さず、強度の高い処罰で芽を摘んでしまわなければならない」と強調したという。果たして彼女の指揮の下、『愛の不時着』のファンたちが一網打尽にされるような事態が訪れるのだろうか。