北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が激しく非難した、韓国在住の脱北者が自国に向けて飛ばした、金正恩党委員長を非難するビラ。
実はこのビラ、あまり遠くまで飛んでいないとの主張が以前からある。
2014年に当時の与党・セヌリ党(現未来統合党)の議員、北朝鮮人権運動を行ってきた河泰慶(ハ・テギョン)氏は、脱北者団体の自由北韓運動連合が風船に入れて飛ばしたビラの半分以上が韓国国内で拾われたと述べ、「(同団体は)北朝鮮まで飛ばないことを知りながら撒いている」と主張した。ちなみに河議員はビラの散布そのものには賛成の立場だ。
そんなビラが、韓国から300キロ以上離れ、中国と国境を接する両江道(リャンガンド)で発見され騒ぎになっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
現地の情報筋によると、先月初めに道内の恵山(ヘサン)市内にある英興(ヨンフン)高級中学校(高校)の裏山で、畑を耕していた兵士や学校の教師、生徒が、金正恩氏を非難する正体不明のビラを複数枚発見して両江道保衛局(秘密警察)に通報した。
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ビラは、長さ10メートルくらいの透明で厚手のビニールでできた風船の中に入っていて、周囲にもビラが散らばっていた。この地域でビラが発見されることはめったにない。
道保衛局は軍の協力を得て、兵士を隙間なく並ばせて歩かせる形で、ビラの収拾を行い、集めたものはすべて土に埋めた。そして、現場を目撃した兵士、教師、生徒、近隣住民から「絶対に秘密を漏らさない」という内容の誓約書を集め、その日のうちに、1号報告(金正恩氏への報告)を行った。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮で最高指導者への批判は極めて不穏当なものとされ、噂話、ビラ、落書きなどその形態を問わず、重罪に処される。たとえ自分がやってことでなくとも、事件が起きたことを口外にすれば、どんな目に遭わされるかわからない。
(参考記事:北朝鮮軍の大佐「落書きしまくり」で公開処刑か)しかし、そんな話であっても人の耳に戸は立てられないものだ。別の情報筋によると、事件からしばらく経ってから市民の間に噂が広がり始めた。最近になって、脱北者を糾弾する内容の大会、講演会、学習会が開かれるようになったが、ビラの話と共に、脱北者が韓国で良い暮らしをしているという話が広まり、当局は対応に苦慮しているという。
ビラは本当に韓国から飛ばされたものなのか、別の地域から飛ばしたものなのかは定かでない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ちなみに前述の脱北者団体、自由北韓運動連合のパク・サンハク代表は2016年11月、中国吉林省長白朝鮮族自治県から、鴨緑江を挟んで対岸にある恵山市の金日成主席の銅像と普天堡(ポチョンボ)勝利記念塔まで、ドローン2機を使ってテスト飛行を行なったと明らかにしている。これに対して北朝鮮は翌年、ドローン妨害装置を導入している。
(参考記事:北朝鮮、中国との国境沿いにドローン妨害装置を設置)