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北朝鮮が、金正恩体制を非難するビラを北に向けて散布した韓国の脱北者団体と、それを許容した文在寅政権への強硬姿勢を強めている。

韓国との軍事境界線に程近い開城(ケソン)のデイリーNK内部情報筋は、今月8日に、開城市の職盟(朝鮮職業総同盟)が脱北者糾弾集会を開いたと伝えた。韓国や脱北者に対する激しい非難は、国内の引き締めを目的にしたものと言われているが、実際には逆効果が表れているようだ。

(参考記事:水着美女の「誘惑作戦」も…北朝鮮を悩ませた体制批判ビラの効き目

演壇に上がった職盟中央委員会の委員長は「核はわれわれの大切な資産だ。革命が勝利し、良い暮らしをするには、必ず核の威力がなければならない」などと、核兵器保有の正当性を主張した。それを聞いた集会参加者は、帰り道に次々と集会の内容への批判を始めたという。

「開城市民の暮らしが急に苦しくなったのは、開城工業団地が稼働できないせいだ。開城工業団地の費用が核(開発)に流用されているという国際社会の非難を受けて、南朝鮮(韓国)が閉鎖した」(開城市民)

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開城工業団地は、2000年6月の南北首脳会談での合意に基づき、南北を分断する軍事境界線のすぐ北にある開城に開設されたもので、韓国企業が多数進出し、2004年末から生産を開始。北朝鮮に多額の外貨をもたらした。しかし、韓国の朴槿恵政権(当時)は2016年2月、北朝鮮の核実験などに対する制裁として閉鎖を決定。北朝鮮側は資産のすべてを没収する報復措置を取り、完全に操業が止まっている。

「開城工業団地が稼働していたころは、配給ももらえてチョコパイや食用油もいっぱいあって、カネも稼げて労働保護物資をもらえて幸せだった」
「核開発がわれわれにもたらしたものは何か。核のせいでわれわれ人民は腹をすかせ、死んでいるのは事実ではないか」
「人民が死んでいるというのに、核の何がわれわれの資産か。核のせいで、国を守る前に国民は餓死しそうだ」(開城市民)

また、壇上で繰り広げられた脱北者に対する激しい糾弾についても、「彼らの脱北に国の責任はないのか」「腹をすかせることなく良い暮らしをさせてくれれば、誰が脱北しただろうか」などと、批判の声が相次いだ。

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地理的に韓国に近いだけでなく、工業団地を通じて韓国のヒト・モノ・システムなどに触れた経験を持つ開城市民にとって、今回の大会はむしろ「何をか言わんや」というものだったということだ。

一方、韓国から遠く離れてはいるものの、咸鏡北道(ハムギョンブクト)や両江道(リャンガンド)の人々も、脱北者非難の群衆大会に冷たい視線を送っているようだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が咸鏡北道の情報筋の話として伝えたところによると、多くの市民が強制されて集会に参加し、脱北者を非難するシュプレヒコールを叫んではいるが、集会終了後にホンネで脱北者を非難する人はほとんどおらず、むしろ集会への不満の声を上げているという。

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各組織が相次いで同様の集会を開催するため、そのたびに動員されて人々は疲弊。生活苦に対して何もしてくれず、韓国を非難してばかりの当局に不満を募らせている。

中には「今のような時期に真の最高尊厳(金正恩党委員長)なら、われわれに何をすべきか」と体制批判に及ぶ人もいれば、「米国の制裁とコロナ騒動の中でも、残った家族は心配なく暮らせるように助けている」として、脱北者やその家族を羨む声を上げる人もいると情報筋は伝えている。

両江道の情報筋も、現地ではむしろ、韓国に住む脱北者の自由な生活への関心が高まっていると伝えた。かつては結婚相手としては避けられていた脱北者家族だが、最近では富裕層並みに人気が高いとも伝えている。

韓国やその他の国に住む脱北者の多くが、北朝鮮に残してきた家族に仕送りをしていることが、調査の結果で明らかになっている。脱北者家族の中には、その資金を元手に商売をするなどして、豊かな暮らしをしている人々もいる。

一方、保安署(警察署)や保衛部(秘密警察)にとって、カネを持っている脱北者家族は、タカリの格好のターゲットだ。そのカネは地元にも流れ、中央にも吸い上げられる。北朝鮮から逃れた人々が、北朝鮮経済を支えているのだ。

(参考記事:脱北者からの「仕送り」に頼る北朝鮮…ネコババ警察官を処分