北朝鮮は今、「農村支援戦闘」の真っ只中にいる。これは、都市住民を近郊の協同農場に動員し、田植えを手伝わせるもので、秋の収穫の際にも行われる。
国営メディアは「皆が田植え戦闘に」とスローガンを叫び、雰囲気をもり立てようとするが、市民の間では不満が渦巻いている。この期間中、「農村支援戦闘の妨げになる」との理由で、市場の営業時間が短縮されるからだ。
(参考記事:「コメで革命を守ろう!」北朝鮮紙、田植え戦闘をアピール)場所や時期によって営業時間は異なるようだが、市場は概ね5時間から10時間程度、営業する。これが農村支援の期間中には、3時間程度に減らされる。それに加え、今年は新型コロナウイルスの拡散防止のため、市場の運営はいっそう難しくなっている。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今月15日から道内の市場が一斉に閉鎖された。また、市場周辺で無許可で営業する露天商の営業も禁止となり、取り締まりが行われている。その名目は「新型コロナウイルスの感染防止」だ。
恵山(ヘサン)市内の恵山市場、渭淵(ウィヨン)市場、蓮峯(リョンボン)市場は毎日午後3時から6時までの営業が認められていたが、それらがすべて閉鎖された。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面市民の多くは市場での商売で生計を立てていることから、今回の市場営業禁止に困惑し、当局への怨嗟の声が渦巻いている。
市民は、閉鎖された市場の周辺の路上に陣取り、商売を始めたが、少し集まれば取り締まり班に追い散らされ、またやって来て、しばらく後に追い散らされるという繰り返しになっている。また、取り締まりに来た保安員(警察官)に食って掛かり、大声で叫び、激しくもみ合うなどの抗議行動も頻発しているという。
14日には、取り締まりに抗議した商人に保安員が武器を突きつけ、それを見た商人が集団で抗議するなどの騒ぎも起きた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面市民の怒りに直面した当局は、市場閉鎖の方針を撤回せざるを得なくなった。
恵山で商売をしているある住民はRFAの取材に対し、21日から消毒作業のために一時閉鎖されていた恵山市場が2日ぶりに営業を再開したと述べたが、営業再開の本当の理由は、悪化する一方の世論をなだめるための窮余の策だとのことだ。
「食べるものがなくなり怒った住民は、もはやいかなる権力機関も恐れないと言って、民生を放置する当局を露骨に非難している」(前述の市民)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面前述のような小競り合いも、ちょっとしたきっかけで暴動になりかねない。地方政府の幹部はそれを恐れているのだろう。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」)
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、新義州(シニジュ)など各地域の市場が午後3時から営業を行っていると伝えた。午後6時に店を閉めることになっているが、市場管理所長の権限で営業時間の延長を認めている。
市場管理所は商人から市場使用料を受け取る立場だが、午後6時に店を閉めさせれば、商人たちの儲けが少ないため、払ってもらえないのだという。
本来は午前からの営業だが、農村支援戦闘で午前は皆田植え戦闘を行い、午後3時からの営業となっている。商人たちは「営業時間が短くなった分、市場使用税を割り引くべきではないか」と支払いを拒否しているとのことだ。