北朝鮮当局は10月5日、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)で、史上最大規模と思われる15万人をスタジアムに動員した上で、公開処刑を行ったと、韓国のNGO「良き友」の機関紙が報じた。
父親の「黒歴史」を隠して処刑?
処刑されたのは、75歳になる石材加工工場の支配人で、その罪状とは、父親の経歴を偽ったというものだ。
支配人の父親は、朝鮮戦争当時に「治安隊」の隊長だったが、それを隠していたというのだ。治安隊とは、仁川上陸作戦後に北朝鮮を占領した韓国軍が村ごとに作った治安維持組織で、共産主義者の弾圧に加担していた。
例えば北朝鮮当局が、米軍による虐殺と主張している信川(シンチョン)大虐殺は、治安隊、キリスト教などの右翼勢力と、労働党、人民軍などの左翼勢力との激しい衝突が引き起こしたものという説が韓国では有力視されている。
(関連記事:北朝鮮「虐殺博物館」の見学キャンペーンで反米教育)いずれにせよ、治安隊に加担していた者は、極めて出身成分(身分)が悪いとされ、職業、進学面で様々な差別を受けている。処刑された男性は、そのような父親の経歴を隠して、本来ならなれないはずの石材加工工場の支配人の座に登りつめた。しかし、保衛司令部の検閲組(監察班)に摘発されてしまった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面罪状は「自身の経歴を偽り、愛国者を装った」ということに加え、「個人で投資して工場を作り、息子と娘を支配人にした」「石材加工工場の地下室に電話機を13台設置し、うち3台を国際電話がかけられるようにして、外国と通話を行ってきた」ことも追加された。他の国では何ら問題にならない企業経営と国際電話も処刑に値するということだ。
15万人もの人が動員された順川競技場だが、公開処刑が終わり人びとが一斉に帰ろうとして将棋倒しとなり、6人が死亡、34人が負傷する事故も発生した。
摘発相次ぐ…拷問で死者も
今回の検閲では、支配人からワイロを受け取っていた中央党の幹部が多数摘発された。また、支配人の息子と娘が父親の名前を使って行った不正腐敗の事例が多数摘発されたことで、関係者はビクビクしている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面この中には、金正日総書記自らが書いた教示を歪曲して、工場の機械や設備を売り払った事例も摘発され、高級幹部が解任されると思われる。
一方、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)では、韓国から援助物資として送られてきたコメを満載していた船に忍び込み、コメ500キロを盗んだ港湾労働者2人が逮捕された。
保安署(警察署)に連行された2人のうち、1人は拷問死し、もう1人には懲役7年の刑が下された。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらに、清津駅前のマンションの裏で、金策(キムチェク)にトウモロコシを売りに行くため、トラックに積み込む作業を行っていた人びとが巡察隊に取り締まられる事件が起きた。巡察隊にトラックとトウモロコシを没収されまいと、激しく抵抗したため、ひどくなぐられて全員が重傷を負ったという。