北朝鮮の金正恩党委員長の妹である朝鮮労働党中央委員会の金与正(キム・ヨジョン)第1副部長は3日、韓国の青瓦台(大統領府)を「不信と憎悪、軽蔑だけをいっそう増幅させる」と非難する談話を発表した。金与正氏名義で談話を発表したののはこれが初めてだ。
北朝鮮の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は2日、金正恩氏の指導の下で火力打撃訓練場を実施。東海岸の元山(ウォンサン)付近から朝鮮半島東の海上に2発の飛翔体を発射した。青瓦台は強い遺憾を表明し、即刻中断を要求した。
これに対して金与正氏は、「国の防衛のために存在する軍隊にとって訓練は主な事業であり、自衛的行動だ」と主張。続けて青瓦台を、「非論理的で低能な思考」「行動と態度が三歳の子ども」「怖気づいた犬ほど騒々しく吠える」などと激しく罵倒した。
このような表現にある韓国人ジャーナリストは、「驚くほど口ぎない言葉だ」としつつ、「従来の金与正氏のイメージからすれば韓国側が受けた衝撃度は大きい」と話す。
金与正氏については、人当たりの良い性格であるということが、かねてから言われていた。かつて、学生時代の友人らが金正恩氏のせいで「大量失踪」した際には、ショックを受け深く傷ついたとされる。
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また韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相(当時)は2018年3月9に、仁川市内のホテルで開かれた会合で、金与正氏について「北の最高指導層に金与正副部長のような性格の人がいることは幸いだ」と語ったという。
趙氏が語ったところによると、金与正氏ら北朝鮮の高位級代表団が平昌冬季五輪の開幕に合わせて訪韓した際、趙氏は同代表団と「睡眠時、朝食時間を除き、ほぼ24時間一緒にいた」という。そして、そこで接した金与正氏について「こちらをとても楽な気持ちにさせてくれた」とし、「非常に重要な時期に重要な責務を負って(韓国に)来て、用心深くなったりつらかったりしたはずなのに、そんなそぶりは見せず常に笑顔で接していた」と述べている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮側としても、韓国側が金与正氏に対してこのような印象を持っていることは百も承知だ。その上で、上述したような談話を発表し、韓国側にショックを与えたわけだ。
その目的は、大きく2つ考えられる。ひとつは、経済制裁や新型コロナウイルスの影響で国力が弱まっていることを覆い隠し、韓国に対する「強硬な姿勢」をアピールするためだ。
そしてもうひとつは、金与正氏の「権威付け」だ。同氏は最近、北朝鮮の政務と人事を一手に掌握する最強の権力機関・党組織指導部の要職に就いたと見られている。一説には、金正恩氏の「後継者」に内定したとの情報もある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そうであるならば、いつまでも「心優しいお嬢様」の顔をしているわけにもいかない。兄と同じく「やるときは、やる」コワモテとしての顔を、徐々に周知して行こうということだろう。