燃えさかる家に飛び込み子どもを救出した北朝鮮の母親

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世界保健機関(WHO)の2016年の統計によると、北朝鮮での火災の年間死者数は302人。この統計の中では韓国(314人)と並んで最下位だ。ちなみに日本は1082人、米国は3155人、最も多いインドは4万5197人に達した。

しかし、この数字が現実に沿ったものか否かは不明だ。北朝鮮では頻繁に大規模な火災が起きている。世界的に報道された例としては、2015年6月の平壌の高麗ホテルでの火災があるが、2016年1月と5月には、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の咸鏡北道保衛部(秘密警察)本部庁舎で連続して火災が起きている。また、昨年3月には咸鏡南道の空軍の飛行場でも火災が発生。同9月末には、平壌の外貨商店で火災が発生し、40万ドル相当の商品が燃えてしまった。

(参考記事:北朝鮮の空軍基地で大規模火災…金正恩氏の不在時、現場緊張

さらに遡ると、慈江道(チャガンド)の江界(カンゲ)市では1991年、ミサイルや砲弾を製造していた軍需工場が大爆発を起こし、1000人規模の死者が発生したとされている。

(参考記事:【目撃談】北朝鮮ミサイル工場「1000人死亡」爆発事故の阿鼻叫喚

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、平壌市内では昨年から区域を区切って朝と夜に電気の供給が行われているが、電圧が不安定なため電圧安定器が欠かせないと伝えている。この機器の質に問題があると火災を起こす危険性があり、上述した外貨商店の火災もこれによるものだと伝えた。

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一方、咸鏡北道の協同農場では先月18日、民家で火災が発生し、子ども3人が逃げ遅れたが、母親の行動で命が救われたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

火事が起きたのは、中国との国境に面した穏城(オンソン)郡倉坪(チャンピョン)労働者区の4.25タバコ農場だ。今月18日の夜、農場内の2世帯が住む長屋から火の手が上がった。向かいの宣伝室で作業をしていた労働者が火事に気付いたが、もはや手のつけようのないほど火の手が上がっていた。

この家に住んでいたのは除隊軍人の夫婦で、夫は冬季訓練に駆り出されて、妻はタバコの包装作業に忙しく、いずれも留守にしており、家には子どもだけが残された。

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火の回りが早く、とても助けに行ける状況ではなかったが、母親と別の女性2人が家の中に飛び込んで、燃え盛る家から子どもたちを救い出した。3人は病院に運ばれたが、幸いにして命に別条はないとのことだ。家は全焼し、隣家の一部を焼いてようやく鎮火した。保安署(警察署)は火災原因の調査に当たっているが、今のところ詳しい原因はわかっていない。

子どもたちの命は助かったが、家族は不安でいっぱいだ。家を失った上に、子どもたちの薬代もなく、親戚は遠く離れた平安道(ピョンアンド)に住んでいて助けを求めることもできない。

おそらくこの夫婦は「集団配置」でこの農場にやって来たものと思われる。世界最長の10年にも及ぶ兵役が終わった後、故郷に戻されず、人の行きたがらないように送り込まれるというものだ。

(参考記事:北朝鮮の若者を飲み込む「1カ月に1000人死亡」の恐怖スポット

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ちなみに北朝鮮には、保安署の傘下に人民保安消防隊と、日本の消防団にあたる群衆自衛消防隊が存在するが、出動如何について一切言及していない。おそらくこの地域には存在しないか、活動ができていないのだろう。また、人命救助を専門とする組織はそもそも存在しない。

(参考記事:「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪