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北朝鮮の住民に足りないものは食料だけではない。慢性的な情報の不足は、北朝鮮住民から自由な思考と判断力を奪っている。北朝鮮住民に『人道的』な情報の流入が早急に必要である。現時点で最も有用な情報の流入方法は、対北放送と対北ビラといえる。北朝鮮住民にとっての唯一の情報のオアシスだからだ。

しかし、対北放送は北朝鮮住民の自発性にある程度頼るしかない。また、放送を聴くためには、周波数を調整出来るラジオが必要だ。しかし、北朝鮮で正式に税関を通過したラジオは、外部の放送を受信する部品が削除されている。改造を行う方法もあるが、処罰の危険が伴う。

北朝鮮に情報を流入させる最も安全で効率的な手段として、対北ビラが注目されている。対北風船には、外部情報や金正日の実体を記録したビラ、ラジオ、様々な生活必需品などが搭載される。

また、GPSを使って狙った位置で風船を破裂させる事も出来る。風船の中の物の収得がバレた場合には処罰を受けるが、ラジオ放送の聴取よりも危険度は低いと言える。風船を使ったビサ散布は心理戦で長期にわたって効果を得ている。

対北風船団のイ・ミンボク団長も、対北ビラを読み脱北を決心したという。同団長は対北ビラの効果を直接経験しており、自信を持って対北風船事業を始めた。脱北者2万人時代を切り開いた対北風船。その全てを明らかにしてみる。

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1.対北風船発展の歴史

イ・ミンボク団長が最初に飛ばしたのはゴム風船だった。ゴム風船にビラをぶら下げて飛ばした。しかし、このゴム風船は耐久性が低いだけでなく、上空の気圧に簡単に負けてしまった。

これを補うために考案されたのが、格安の農業用ビニールを用いて大型気球を作り、その下のビラをぶら下げる方法だったが、今度は時間の調整が課題となった。この問題の解決策として「化学式タイマー」を開発した。

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化学式タイマーは、ビラの入ったビーニール袋を結んだワイヤーを塩酸で溶かす方法。しかし、この方法は準備に手間がかかり、正確な時間に散布する事も難しい。

この為より正確なタイマーが必要となった。機械式タイマーと電子式タイマーが考案された。

機械式タイマーは、ビラの束が入った袋を結んだ紐をゼンマイに巻きつけ、ゼンマイが回転すると紐が徐々に解ける仕組み。これなら正確な時間に散布出来たが、3時間までのタイマーの設定がネックとなった。

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時間を補完する為に電子化が行われ、10時間までの待機時間が確保された。

2.対北風船の部品

理論上は対北風船は8.3キロまで積むことができる。しかし、試行錯誤の結果、北朝鮮まで安定的に飛ばすためには、7〜7.5キロが最も適正な重量との結論を得たとイ団長は説明した。

風船の中には、ビラ、DVD、GPS、ラジオ、靴下、手袋、ボールペン、アスピリン、バンドエイドなどの生活必需品やドル、人民元、北朝鮮ウォンなどが入っている。

同団長によると、病気がちな北朝鮮住民にとって、医薬品は非常に重要な支援物品である。特に、北朝鮮住民は脂肪の乗った食事を頻繁に摂取出来ない為、消化器系の病気が多い。胃腸薬は北朝鮮住民にとって必需品である。

また、手袋や靴下、ドルや人民元は住民にとっても重宝される支援品である。

3.対北ビラの種類

ビラは紙とDVDの2種類に分けることができる。

紙のビラは金正日と労働党の実体、北朝鮮体制を批判する内容の文・絵、韓国の発展した状況を知らせる内容が書かれている。外部の情報に接する機会がほとんどない北朝鮮住民は、詳細な情報を届けるほど高い関心を見せたという。

材質は最近では水に濡れても問題が内容にコーティングされた素材を使う。

最近では北朝鮮体制、金正日父子の批判、チュニジア・エジプト・リビアの民主化革命の内容も含まれている。また「キム父子の世襲は必ず失敗する。エジプトのムバラク、リビアのカダフィは、独裁政権を打倒する革命によって失敗した。人民たちよ、60年の世襲独裁を打倒しよう」と書かれている。

昨年からはDVDビラも送られている。キム・スンチョル北朝鮮改革放送代表が制作したDVDには、金正日の実体と韓国の日常を紹介する内容が盛り込まれている。最近、DVDプレーヤーが北朝鮮全域に普及した為、『デジタルビラ』を散布している。映像、音楽、ニュースなど多様な情報が含まれており、北朝鮮住民に躍動感のある情報を提供することができるという長所がある。