インタビュー対象:咸鏡北道居住の40代の前職保安員の男性
日時:3月中旬
- 韓国のラジオ放送を毎日聞くといいましたが、主にどのような放送を聞いていますか?
私は中国産の小型ラジオを持っていいます。仲の良い密輸業者から苦労して手に入れたものだが、私の一番大事なものです。対北放送が多いと聞きましたが、ここ(咸鏡北道)では、『KBS韓民族放送』と『アメリカの声』が良好に受信できます。朝鮮語で放送されている『中国国際放送』と『モスクワ放送』も受信でき、日本のNHK放送も聞けます。そのほかに韓国の『KBS第1ラジオ』と『極東放送』なども聞け、季節や天候によって波長の変動が激しく、継続的に聞くのは難しいです。軍に従事していた人の話によると、黄海南道や江原道ではより多くの放送を聞くことができるといいます。
個人的には『KBS韓民族放送』が一番好きです。私の知る限り、他の人もこの放送を主に聞きます。その理由は、何よりも時間と波長の制限を受けないからです。私は主に夜10時から12時までの間に放送をよく聞きます。朝鮮半島情勢や国際情勢に関心が高い為、この時間帯に新聞放送を聞きますが、私の妻は音楽や脱北者や関連情報を好きなようです。
- 最近の中東情勢と関連し、国境地帯だけでなく内陸部でも住民統制が強化されたというニュースがあります。住民統制はどの程度で行われていますか?
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面数年前までラジオは、大学生や知識人や幹部たちが南朝鮮のニュースや国際情勢を理解するために使っていました。しかし、今では韓国のラジオを通じて北朝鮮の内部情報まで詳しく知ることが出来ます。問題点は驚くほど正確な情報がある反面、質の悪い情報もある点でしょうか。
中東情勢もこれと似た例です。中東情勢の影響で警戒を強化したとは限らない。北朝鮮で多くの人は中東情勢をほとんど知らない。知っていたとしても、私たちの現実と繋がっているとは考えていない。外国の事情は良く分からないが、ここで人民が起ち上がるには状況が余りにも劣悪です。最近の警戒強化は怒り心頭の住民の偶発的な暴動を抑える為の措置だと思われます。
金正恩を後継者に指名した2009年から現在まで、民心は最悪の状況まで悪化しました。『150日戦闘』に次いで『100日戦闘』まで行ったが、人民が苦労しただけで何の改善点も無かった。無理な設備の改造によって、まともに動いていた機械もダメにしてしまった。この当時、「青年大将金正恩同志が直接150日戦闘を発起し、陣頭指揮を取っておられる」と騒いでいたが、150日・100日戦闘が終了した後には、金正恩の名前はキレイに消えていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面- 民心がこのように悪い状況で、中東のように民主化デモが起こる可能性はないと思いますか?
結論的に垂オ上げると、中東情勢とは関係なくこの様な警戒措置を下すしかなかったと言えます。中東事態が北朝鮮に影響を与えるのは、ほぼ不可能です。中国で民主化デモが起きたというが、中国でデモがおきたからといって北朝鮮でも連鎖的に起こる可能性は低くいでしょう。しかし、中国で民主化に成功した場合は、事情が変わるだろう。
金正日が軍隊まで動員して住民を統制している背景には、問題が差し迫っているということ。別の角度から解析すると、既に党・行政・司法機関が自らの役割を果たせていないとの話にもなります。中堅クラスの幹部に対する大々的な入れ替えも既に開始されています。予測が困難な情勢がどうなるかは保証できませんが、今年の秋には全てが入れ替わるでしょう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面- 貨幣改革で住民の反発が激しかったが、これを静める為に当局はどのような措置を取りましたか?
2009年の貨幣改革措置は、朝鮮戦争を除いて我が国の歴史上で最も大きな混乱でした。それにもかかわらず、無謀な『貨幣交換』が住民の反発に繋がらなかった理由は、お金のない労働者や農民たちの絶対的な支持を受けたからです。農民への優遇措置は、反発力を失いました。特に、貸付業者からの債務の帳消しは、借金に苦しむ人々を救いました。しかし、これだけで終わったのです。
貨幣改革の弊害が浮黷驍ニ、朴南基を銃殺し金正日・金正恩は責任を回避します。人民保安所には「反党・反革命分子の朴南基の犯罪行為」という講演資料が配られた。革命隊の中に隠れていた一部の反党・反革命分子を集めた朴南基が国家財政を破綻させ、苦難の行軍を克服し、社会主義強盛大国の建設に向け闘争している朝鮮人民に多大な被害を与えたということです。
貨幣改革は国家転覆を狙った朴南基が、翌トから準備した緻密な計略だったと宣伝している。しかし、資料を見れる限りでは、どこにも具体的な反革命行為や反党行為はの根拠を見つける事が出来ない。微妙な表現で解釈を難しくしただけです。これらの資料を保安所などに大量に配布し、住民たちの目に留まる様に仕向けました。そして、朴南基の流言飛語が拡散するようにしたのです。金正日・金正恩はこうやって責任を逃れたのです。
- 当局の社会統制が強化されているが、現在の市場の状況は?
現在は貨幣改革前と比べると半分ほどに縮小しています。都市部の市場は依然と同じ規模を維持し商売も活発だが、他の郊外の場合はガランとしている。住民の購買力が落ちたからです。改革でお金を奪われた商人が貧困層に没落したが、北朝鮮当局に悪い影響を与えなかった。元手が無くなった層が農業に専念する結果をもたらし、食料備蓄の増加ももたらした。
しかし、貧困層に転落したの都市部の住民の反発はかなり激しくなっています。特に、1月10日から開始された『軍用米援護』事業は、都市部住民の感情を爆発寸前にまで引き上げました。この事業が発表されてから2日後には、コメ価格が3000ウォンまで上昇し、収拾のつかない事態に発展しました。
事態が悪化した1月17日には、各地域に配置された軍が住民の統制を行い、市内の大通りや路地にまで完全武装した機動隊が巡回し、地方軍(清津第9軍団)の巡回組が組織され、武装人員の夜間パトロールも強化された。清津スナム市場は、警務局(憲兵隊)の武装隊員2人と非武装の地方軍巡察隊員3人、保衛司令部検閲隊員2名が常時待機しているというが、私が見た限りではこれよりも多いと思われる。
これに保衛部の担当駐在、市場担当の担当保安員3人、そして市場管理局の人員11人が加われば、市場は蟻の付け入る隙も無い。だからといって、市場での商売の妨害や住民の物をむやみに奪いはしません。以前は保安員がお金が必要な度に商人の物を回収していたが、今は一切の住民を刺激していない。ただ徹底的に監視しているだけです。
- 当局のこのような監視に商人や住民はどう反応しているのか?
どちらかと言うと歓迎している。夜間の住民の活動が大幅に増加しました。女性は暗くなると怖くて外出出来なかったが、今ではある程度遅い時間でも街を行き交う女性が増えた。夜間に市内を出歩くと身分証明書の検査が多くて煩わしいが、その分安全が保障され、違法行為を行わない限りには恐れる必要はありません。(金正日の誕生日)2月16日以降には、住民を暴力した兵士と法官を厳重に処罰する指令も下され、人々に活気が溢れている。
しかし、今回の警戒強化が住民を刺激せずに商売の自由を保証しているが、市場は萎縮している。最も大きな打撃を受けているのは売春市場。統制が強化され売春行為は確実に減少しています。この他には、麻薬取引が萎縮したのも住民の商売に大きな影響を与えています。
- 麻薬取引の減少と住民の商売に影響を与えるほどなら、これまで麻薬が住民にどの程度流通したのでしょうか?
麻薬は北朝鮮の地下経済を強固に支えており、市場を活性化させる大きな要因でもあります。金正日が麻薬の根を絶つ為に本格的な取り締まりに乗り出したのが2008年です。一部では「金正日も覚せい剤を使っている」という奄煢?チているが、根拠のないデマだと思っています。金正日が掲げた麻薬との戦争は、集中的な取り締まりに入りが行われてからは、むしろ後退し始めました。なぜなら、麻薬の流通があまりにも広く流通していたからです。上層部は麻薬がこれほどまでに住民に浸透しているとは、考えもつかなかったのです。
当初は、密売人は3年以上の刑罰又は死刑までの厳罰に処され、服用者も懲役又は労働鍛錬隊の処罰を受けました。しかし、取り締まりの過程で国家が手のつけようが無い事態である事を把握された。住民の半数以上を捕まえる事は出来ないのでは無いですか。仕方無しに国家が譲歩を見せたのです。
譲歩措置は処罰ではなく、継続的な検査や治療を行う事です。また、30g未満の取引に限り、労働鍛錬隊の処罰6カ月に変更しました。しかし、これすらも余りにも多くの人が刑罰を受ける事になり、10月からは50gに変更され、さらに一度だけの取引は労働単連隊の処罰に後退しました。これは北朝鮮社会が麻薬に汚染されているかを如実に表す出来事で、譲歩は少なくとも統制が取れる体制を整える為だと思われます。