4人が射殺され、なんとか中国側に逃げおおせたのは1人だけだった。ブローカーはその場で逮捕された。
逮捕されたブローカーは、普天郡に駐屯する国境警備隊の中隊の政治指導員の妻だったが、実は保衛部のスパイだった。
「警備隊指導員の妻は既に人身売買容疑で保衛部に逮捕されていて、スパイとなることを強制された。今回の計画は準備段階から保衛部に筒抜けだった」(情報筋)
つまり、妻は保衛部から命じられるままに計画を進め、脱北希望者らを罠にかけたということだ。
夫の指導員も逮捕され、二人とも保衛部の取り調べを受けた上で、2ヶ月に渡って予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を受けているという。2人がその後、どのような処遇を受けているかについては詳らかでない。
(参考記事:北朝鮮、脱北女性を拷問した将校を厳重処分…人権問題を意識か)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
事前警告も行わずにいきなり銃撃、射殺した今回の事件を知った地元民は怯えきっている。
「当局は国境地帯で(わざと)銃声を鳴り響かせ、脱北する気が失せるようにしたようだ。国境を超える者は射殺しても良いという指示があった可能性がある」(情報筋)
実際、金正恩党委員長は、脱北に対して射殺を含めた厳しい対処を取るように指示しており、今年5月には朝鮮労働党の大紅湍(テホンダン)郡副委員長の30代の息子と、同行していた2人の3人が脱北に失敗し、射殺されている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こうした残忍さにおいて、金正恩氏が父親に勝るとも劣らないことは、すでに国際社会でも広く知られている。自分が気に入らない部下たちを処刑する際、その場面を女性芸能人らに無理やり「見学」させた前科まである。
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)
また、彼らが見せしめで殺されたことについて情報筋は、最終目的地が韓国だったことが影響した可能性があると指摘した。先に脱北して韓国に定住し、残りの家族を北朝鮮から呼び寄せる形の脱北が多いことを考えると、今回の件で亡くなった4人も家族だった可能性が考えられる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面川の両側は中朝ともに人口希薄地帯が広がっており、手荒なことをしても、北朝鮮の人権状況を批判している国際社会に知られることはあまりない。実際の犠牲者は、知られているより遥かに多いだろう。
(参考記事:脱北に失敗した家族を待つ過酷な運命)