北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市にある軍部隊の戦時物資保管倉庫が盗難に遭った。北朝鮮当局は今回の事件を『反国家的行為』と規定し、必死の捜索を続けている。逆に言えば、それだけ金日成政権が受けた衝撃が大きかったといえる。

北朝鮮で軍は朝鮮労働党と共に体制を支える二大柱だ。金正日は金日成が死亡後の90年代中盤以降に、『先軍政治』を事実上の北朝鮮式の軍事独裁路線として前面に出す。金正日が第一次南北首脳会談で「私の力は軍があってこそ」と告白したほどだ。

権力のナンバー2の金正恩も昨年の党代表者会を前に「大将」の称号を受け、党中央軍事委員会副委員長として公式登場するなど、軍を掌握することは指導者の最優先事項だ。このように北朝鮮の軍重視路線は、軍国主義的な性格より体制維持を目的とした内部を統制することに活用されている。

金正日-金正恩父子の直轄統治下にある軍隊で『戦時物資保管倉庫』で物資が奪われたことは、社会の規律だけでなく軍の規律にも深刻な亀裂が発生しているという見方も可能だ。接近することさえ容易ではない軍部の倉庫が襲撃されたのは、内部の犯行もしくは内通者がいる可能性が大きい。

金正日の絶対的な信頼を受けている軍にも『水漏れ』が起きているという意味でもある。

北朝鮮社会でかなり前から窃盗が日常化している。社会的な規律を支える党と法機関員の不正腐敗も蔓延している。北朝鮮の行政システムのマヒは幹部の不正腐敗から始まった側面が非常に大きい。

『党職員は堂々と、保衛員は見られなように、安全員は安全に食べる』という噂がもう昔話だ。彼らが非社会主義検閲で得た押収物を密輸業者に転売することはもはや日常茶飯事だ。このように社会的な規律が崩れているなかで『最後の砦』で見なされた軍ですら戦時物資が奪われたという事実は北朝鮮社会の亀裂が軍にまで広がっていることを示唆する。

今回の事件は反体制的な性格ではないが、北朝鮮当局への住民の大胆な挑戦が実行される可能性を見せている。慢性的な経済難のなか、日々の激しい生存闘争を行っている北朝鮮住民の挑戦が、いつでも公権力に向かうかもしれないことを見せ、波紋は小さくない。

軍部隊の戦時物資盗難事件は、結局、金正日の最後の生命線である軍も永遠の安全地帯でないことを見せている。北朝鮮軍を相手にした心理戦活動をより一層強化させる必要性を感じる。

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