竹島問題を巡る韓国・北朝鮮の「自爆行為」

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は8日、日本が「わが民族の領土である独島(竹島)を自国の領土であると強弁を張っている」と非難する論評を配信した。

北朝鮮メディアは何かある度に同じような論評を出しているのだが、今回は日本の2019年版防衛白書に反発する内容だ。そこには、次のような記述がある。

「看過できないことは、今年の防衛白書に独島上空で武力衝突が発生する場合、航空『自衛隊』戦闘機のスクランブルがありうるという文言を初めて明記したことである。(中略)

独島上空への『自衛隊』戦闘機のスクランブルを通じて武装衝突を挑発し、それをきっかけにして20世紀に遂げられなかった『大東亜共栄圏』の昔の夢をなんとしても実現しようとする日本の野望はとうとう危険極まりない実行段階に入った」

しかし実際のところ、防衛白書には、この論評が指摘したような「文言」は「明記」などされてない。正確には、「領空侵犯に備えた警戒と緊急発進(スクランブル)」について解説した3ページにわたる項の最初と最後で、次のように述べているまでだ。

「空自は、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合には、戦闘機などを緊急発進(スクランブル)させ、その航空機の状況を確認し、必要に応じてその行動を監視している。さらに、この航空機が実際に領空を侵犯した場合には、退去の警告などを行う」(273ページ)

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「年7月には、中国H-6爆撃機2機及びロシアTu-95長距離爆撃機2機が、日本海から東シナ海までの長距離にわたる共同飛行を実施した。また、Tu-95長距離爆撃機の飛行を支援していたとされるロシアA-50早期警戒管制機1機が、島根県竹島の領海上空を侵犯する事案が生起した。その際、韓国の戦闘機が当該ロシア機に対し警告射撃を行った。わが国は、領空侵犯を行ったロシア政府及びロシア機に対し警告射撃を行った韓国政府に対して外交ルートを通じて抗議した」(275ページ)

ひとつの項でこれら2点に言及しているのを見れば、「竹島上空に外国機が来たらスクランブルするぞ」と示唆しているようでもあるが、敢えて離して記述したとろころ見ると、敢えて言明を避けたと言えば言えるだろう。

ではなぜ、KCNAの論評はこんな内容になっているのか。執筆者はまず間違いなく、インターネットで誰でも見ることのできる防衛白書の閲覧を許されていない。その代わりに、防衛白書の同じ部分について報道した韓国メディアの記事を読んだのだろう。

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たとえば東亜日報(日本語版)は9月28日付で、「日本、独島上空での衝突時に戦闘機出撃の可能性示唆」と報じており、他のメディアも同様の伝え方をしている。「示唆」としているところが、KCNAと違って正確だ。

ちなみに韓国軍制服組トップの朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長は8日の国政監査で、与党議員から「日本の戦闘機が独島(竹島)上空など韓国領空を侵犯した場合はどう対応するか」問われ、「定められたマニュアルに従って断固たる立場を示す」と答えている。

公の場で軍の制服組トップがこのような質問をされたら「断固たる立場を示す」と答えるのは当たり前であり、むしろ聞くまでもないことと言える。おそらく前述した韓国メディアの報道に触れた与党議員は、こうした質問を軍にぶつけることで、自らのいわゆる「愛国心」を有権者にアピールしたかったのだろう。

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厄介なのは、ここから「断固たる立場とはどのようなものか」という議論が転がり出てくる可能性があることだ。現実に責任を持たない無責任な世論は、韓国軍に無理難題を押し付けてしまいかねない。

日本にも、同じような危険がある。これまで自衛隊が竹島上空へのスクランブルを控えてきたのは、まさしく「自制心」のなせる業だろう。しかし、北朝鮮や韓国でこのような騒ぎがひっきりなしに沸き起こると、日本としても「自制心」を試されることになりかねないだろう。

そうなれば、北朝鮮も韓国も、そして日本も、今よりさらに大きな安全保障上の負担にさらされる。まさに自爆行為だ。

(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

これこそが、ナショナリズムを背景にした関係悪化の怖い所だ。