韓国政府が、脱北者の放射線被ばくを隠していたのではないか、との疑いが浮上している。
韓国紙・朝鮮日報が2日付で伝えたところでは、韓国統一省が昨年9月、北朝鮮の核実験場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)の豊渓里(プンゲリ)周辺出身の脱北者10人を対象に被ばく線量の調査を行ったところ、5人の被ばくの痕跡が「染色体異常」の判断基準に当たる250ミリシーベルトを上回ったという。中でも48歳の女性は、「発がん確率の急上昇」に該当する1386ミリシーベルトという結果が出たという。
この結果について、同紙にコメントしたKAIST(韓国科学技術院)のチョン・ヨンフン教授は「数百ミリシーベルト以上の数値は、日常生活では絶対に出ることはあり得ない」「かつて米国ネバダ州などで核実験を行っていた当時も、これほど高い数値は報告されなかった」などと指摘している。
それにもかかわらず、統一省はこの結果を公表してこなかった。同紙は「韓国政府が、ソウルと同水準(年間1ミリシーベルト)の福島の放射能問題を絶えず取り上げているのとは相反する態度だ」と批判している。
今回明らかになったのは、野党・正しい未来党のチョン・ビョングク議員の事務所が、統一省に提出させた資料に基づいて発表したためだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面統一省関係者は、前々回の2017年に検査を行ったときに、「放射線被ばくと核実験との因果関係はない」との結論に達し、今回も同様の結果に達したので発表しなかったと説明しているとのことだが、前述したチョン教授の指摘を考えれば苦しい言い訳に聞こえる。
豊渓里は、福島よりもよほど韓国に近い。国民の安全を考えるなら、韓国政府は当然、北朝鮮に対して放射能漏れなどの調査を要求すべきだ。それをしないのは、南北対話を何が何でも進展させたい文在寅政権の「政策」が優先だということではないのか。
ちなみに豊渓里近くには、悪名高き政治犯収容所「16号管理所」(化成〈ファソン〉収容所)が存在し、ここに収容された政治犯が、核実験施設で防護服なしで強制労働させられていたという情報があるのだ。収容所の警備兵出身で脱北者の安明哲(アン・ミョンチョル)氏は、「若くて元気な政治犯たちがトラックに乗せられ、『大建設』という名目で核実験施設に連れて行かれた」と証言している。
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だが、現政権の「政策」を優先するあまり国民の安全を顧みず、放射能汚染について韓国政府が矛盾した態度を取り続けるならば、北朝鮮のやっていることと本質的にどれほどの差があると言えるだろうか。
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