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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)。中国との国境を流れる鴨緑江に面した地域を除いてほとんどが2000メートル級の山に囲まれた高原地帯で、平均高度は1339メートルにもなる。

気候的に稲作ができないこの地域の人々は昔から、エンバク、アワ、キビ、ジャガイモなどの雑穀と川魚を糧にして生き抜いてきた。そんな貧しい両江道の人々にとっての手頃な収入源のひとつが、山に自生している薬草だ。

旬を迎えた両江道の山々には、多くの人が薬草取りに詰めかけていると現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

この時期の市場には、リンドウ(漢方薬の竜肝)、カタヒバ、ミシマサイコ(柴胡)、オケラ(白朮)、タチセンニンソウ(扁桃炎の薬)などが市場で売られ、ワゴンがいっぱいになっても数日でなくなるほどの売れ行きだという。薬草を必要としている医療機関や貿易会社が、不足分を市場で買い付けるからだ。また、市民も消炎鎮痛剤としてこのような薬草を買い求めている。

(参考記事:北朝鮮医師、驚愕の離れ業で「医薬品」を製造

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貿易会社は、中国からの注文に応じて住民に薬草を集めるように呼びかけている。リンドウは春物や夏物が効能が強いと言われていることもあり、多くの人が山に登る。

「谷の多い両江道で自生する薬草は効能が強いと言われ、近隣の地方からも薬草取りにやって来る」(情報筋)

中でも密輸用として最も高値で取引されるのがイワベンケイという薬草だ。1週間集めて売りに出せば小麦粉数十キロ分になるため、多くの人が山の中でも寝泊まりしてイワベンケイ取りに励む。

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中には遠方からやって来る人もいて、地元民とのトラブルに発展する場合もあるという。その中には、南に遠く離れた黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)薬科大学の学生までいた。

「庶民を食わせているのは朝鮮労働党ではなく山だ」との声が上がるのも当然だろう。

しかし、薬草の密輸はあまり芳しくないようだ。

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米政府系のラジオ・フリー・アジアは今年4月、中国の国境都市に住む情報筋の話として、 中国人の間では漢方医学より西洋医学を好む傾向が強まり、薬草の需要が大きく減少していると伝えた。北朝鮮の貿易関係者は、北朝鮮産の薬草を売り込むために各地の漢方医に営業をかけているが、患者数の減少で売れ行きは思わしくないという。

中国では2000年代中盤まで、北朝鮮産の薬草の人気が非常に高かったが、漢方離れに加え、国内産が増えた影響で売れなくなった。

その理由について延吉の薬種商は、北朝鮮産の薬草には雑草などの異物が混入しているなど品質管理がずさんであり、乾燥処理がされていないなどとにかく手がかかるというのだ。

品質管理に問題があるとの指摘は以前からなされているが、改善の兆しは見られないようだ。

(参考記事:「いたいけな北朝鮮人から暴利を貪る」という構図にご立腹の中国人業者

そこに加えて、北朝鮮が繰り返した核実験で薬草が汚染されているのではないかという懸念も浮上したことも悪材料となっている。核実験は国際社会の制裁を招いたことにとどまらず、「風評被害」という形でも北朝鮮庶民を苦しめている形だ。

(参考記事:北朝鮮の核実験場周辺で「放射能汚染の噂」が拡散