貧富の格差拡大の北朝鮮で大人気の「激安13円均一」食堂

旧来の計画経済と配給システムが実質的に崩壊し、なし崩し的な市場経済化が進む北朝鮮。少しずつ私有財産を蓄え始めた人々は、レジャー(消費生活)を楽しむようになっている。

外食も、北朝鮮国民の好むレジャーのひとつだ。しかし、外食するには様々なハードルを超えなくてはならない。

昔から存在する国営食堂の場合、気が向いたからとふらっと立ち寄ったところで入れてもらえるわけではない。入口で、職場や人民班(町内会)を通じて1年に数回配布される予備票と呼ばれるクーポンの提出を求められる。食堂の前でたむろする「ダフ屋」から買うことも可能だが、一般庶民には少々負担が重い。

主要都市で増えている外貨払いのレストランなら予備票なしでも入れるが、幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)でなければ手が届かない価格帯だ。

(参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

民間人が経営する安い食堂も予備票なしに入れる。いくら貧しい人でも子どもの誕生日などの特別な日には外食しようとするが、肉のスープ1万北朝鮮ウォン(約130円)、冷麺5000北朝鮮ウォン(約65円)という値段を見て尻込みする。

(参考記事:高級レストランを貸し切りにする北朝鮮のリッチな大学生

そこで登場したのが、「1000ウォン食堂」だ。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、安州(アンジュ)など複数の地方都市の駅前やバスターミナル、市場などに「1000ウォン食堂」と呼ばれる食堂が登場し、人気を集めていると伝えた。

この「1000ウォン食堂」はその名の通り、すべてのメニューが1品1000北朝鮮ウォン(約13円)という激安ぶりで、早速庶民ご愛用の一膳飯屋になっているという。ごはん類、餅、チヂミなど様々なメニューがあるが、中でも人気なのがトウモロコシ飯にジャガイモスープだ。

コメを1粒も混ぜていないトウモロコシ飯は、味は白飯にかなわないものの、量が多い上に、キムチとジャガイモスープを無料で付けてくれるとあって好評で、「労働者食堂」とも呼ばれているという。

ちなみにトウモロコシ飯は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに生き残るために食べられていたこともあって、食糧事情が安定して以降は昔ほど食べられなくなっていた。だが、昨年の凶作と国際社会の制裁による不況を受けて復活したようだ。デイリーNKの調査によると、現在のトウモロコシ1キロの価格は1500北朝鮮ウォン(約20円)、コメの3分の1程度だ。

1000ウォン食堂の経営者は、店で客を待っているだけではない。

ランチタイムともなれば、市場を回って移動販売を行う。食事をする暇も惜しんで商売に励みたい商人にとって、わざわざ市場内の食堂に行って3000北朝鮮ウォン(約39円)のオンバン(肉の入ったクッパ)を食べるのは時間的にも経済的にももったいない。

そこで、商売をしながらでも食事ができる移動販売に人気が集まっているという。

今や北朝鮮においても、苦しいときほど商才を発揮してガッチリ儲ける人が少なくなく、次々に新しい商売が登場する。携帯電話で注文を受けてノンマグクス(トウモロコシ麺を使った冷麺)を配達するのも、そんな新商売の一つだ。

(参考記事:猛暑の北朝鮮で人気を集める「携帯電話で冷麺デリバリー」

市場の商人の間で最も人気なのは、「速度戦餅」だ。速度戦とは工事を速く進めて工期を短縮するものだが、質を無視した進め方で手抜き工事と労災事故の原因となっている。速くできて速く食べられることからその名がついた速度戦餅だが、こちらの味は「手抜き」とは無縁で、脱北して韓国に住む人々の間でも「ふるさとの味」として愛されているほどだ。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

「市場が活気を取り戻した」と伝えた別の情報筋は、食料品の価格が安定している反面、食堂で出される料理の値段は上昇傾向にあると説明した。それは上述した、外貨払いのレストランが各地に増えているからだ。

「国の名節や週末になると、レストランを訪れる客の階層が明確に現れる」(情報筋)

どの食堂に行くか、行けるかが階層で分けられてしまうのが、貧富の差が拡大する一方の今の北朝鮮の現状を示している。

(参考記事:北朝鮮「金持ち女性」たちの密かな楽しみ…お国の指示もそっちのけ

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