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電力難解消のため、北朝鮮が建設に力を入れている咸鏡南道(ハムギョンナムド)の端川(タンチョン)水力発電所。

中国との国境を流れる鴨緑江など複数の河川の水を、160キロにも及ぶ地下水路を通して東海岸まで流し、落差を利用して発電するカスケード発電所で、途中には8つのダムと発電所が建設される。計画通りに行けば180万キロワットの電力が生産できるようになるという、巨大プロジェクトだ。

その工事に当たっているのは、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊に加え、突撃隊と呼ばれる、各地の国営企業や機関から駆り出されたタダ働きの建設部隊だ。「最高指導者に捧げる」というやりがいを押し付けられ、搾取されるというブラック労働の最たるものと言えよう。もちろん、まともな待遇など期待できない。

(参考記事:若者の命を次々と飲み込む…北朝鮮「呪われた巨大発電所」の実態

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、端川発電所の建設に動員された労働者の間から、「仕事はつらいのに寝床も食事もひどい」と苦痛を訴える声が上がっている。

毎日15時間もの長時間労働を強いられ、手袋など基本的な備品すら支給されないまま、氷点下の寒空の下、泥の除去作業などをさせられる。身体的に不利な女性も男性と同じだけのノルマを課される。素手で作業するしかないため、手がガサガサになって血が吹き出す。それでも作業を続けることを命じられる。

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そんな重労働の後に出される食事が貧弱極まりない。ゆでトウモロコシに、塩のスープかトウモロコシのスープだけで量も少なく、食べ終えた直後から空腹を感じるほどだという。

当局は現場に仕事を丸投げし、労働者の待遇改善を図ろうという考えもないようだ。そんな中、労働者はサボタージュで密かに抵抗している。

指示された通りに作業を行わず、監督官に責められればワイロでもみ消す行為が繰り返されている。次の労働者がやってきても、テキトーな作業が積み重ねられた現場では工事を進めようにもないため、最初からやり直す、がまた指示通りに行わないという堂々巡りとなっている。そうしているうちに、使い物にならない巨大建築だけが残されるということになる。

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また、現場から逃亡する人も増加の一途をたどっている。現場に駆り出された恵山(ヘサン)紡績工場の従業員のうち、20代女性は予定の半分の3ヶ月で逃げてしまった。

皆が顔をしかめるつらい現場でホクホク顔なのは、商人くらいだろう。建設現場のほとんどは山奥にあるため、たとえ現金を持っていても、食べ物や手袋などを買いに市場へ行くことはかなわない。

そこで、町から週1回の割合で行商人がやってくる。いなり寿司、トウモロコシパン、トウモロコシ麺、ソイミートなどをボッタクリ価格で販売するが、腹をすかせた人々が一斉にやってきてあっという間に売り切れるほどだという。