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北朝鮮は今年の新年共同社説を通じて、韓国に対する「対話攻勢」を強調した。新年初めから韓国政府、市民団体を対象に対話攻勢を広げている。

昨年に相次ぐ軍事挑発を敢行し、朝鮮半島の軍事的な緊張を高めた北朝鮮が、突如として立場を変え和解の手を差し出す理由は何であろうか?

デイリーNK東京支局は、日本の代表的な北朝鮮問題専門家である防衛省傘下の防衛研究所の武貞秀士・総括研究官に今年一年の北朝鮮の対南・対外政策の話を聞いた。

インタビューは1月18日午後、東京都目黒区の防衛研究所で行われた。インタビュー第2弾では、核開発と南北関係等の北朝鮮の2011年の対外戦略を展望した。

−去年の秋、北朝鮮はウラン濃縮施設を米の科学者などに公開するなど、核問題に関して揺さぶりをかけてきましたが、この意図はなんでしょうか?

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北朝鮮が、プルトニウム型でなくウラン濃縮型の核開発につながるウラン濃縮活動を事実上認めたことがポイントだ。大量破壊兵器開発の真の目的はウラン濃縮型であり、プルトニウム型は放棄する可能性はある。そういう意味では、北朝鮮にとって今年は「ウラン濃縮型核開発」の元年とも言える。

ウラン濃縮による核兵器開発の存在は、まだ認めていないが、金正恩の使命はウラン濃縮型の核兵器によって、核抑止力をさらに強化することだ。ウラン濃縮型核兵器開発宣言する時が彼の権力のピークとも言えるが今年中は難しい。しかし、それにつながる中間的な結実をもたらす必要がある年になるだろう。

−そうなるとますます核開発の放棄は難しくなりますが、南北関係ではどのような態度で臨むつもりなのでしょうか?

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一進一退だが、最近の北朝鮮は対話攻勢にチャンネルに変えた。共同社説、そしてその後の南北対話の積極的な呼びかけがそれを証明している。

これは穏健派と強硬派が入れ替わり立ち替わり方向の違うことをやっているのではない。脅威を煽ってから、その後に韓国に対して「我々と闘ってもプラスにならない。同じ民族同士なら米軍を追い出して、米軍の助けを借りないようにしよう。通常戦力で北朝鮮に抵抗するような無駄なことをせず、対話で南と北で新しい統一のコリアをつくっていきましょう」という韓国人へアピールすることにチャンネルを変えただけだ。

来年2012年には韓国の大統領選挙がある。今後も、統一戦線工作を活発にするには韓国への軍事挑発は、却って逆効果だ。対話のチャンネルに切り替えた。来年に向けて長い期間での対話攻勢が続くと見ていい。

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−米中首脳会談などを踏まえて対米関係でも動きがあると思われます。また、対日関係についての方向性は?

米国は、色々言いながらも中国との関係を大切にしている。だから北朝鮮を大事にしている中国の意向を無視しつづけるわけにはいかないだろう。さらに米国の対外戦略には優先順位がある。第一は、ベトナム戦争化しつつあるアフガンの現状。そして第二番目に核兵器につながる疑惑があるイランのウラン濃縮活動だ。ヨーロッパ諸国と連携してイランへの監視活動を強化する必要があることに比べると、北朝鮮の問題は三番目だ。そう考えると米国は6カ国協議再開を否定し続けるかどうかはわからない。

日朝問題については、北朝鮮は日朝関係の打開を重要視していない。韓国への硬軟織り交ぜた揺さぶりが、有効だと判断し、日本は後回しだ。つまり、経済でいえば中国の支援。対話なら米国や韓国。これらを北朝鮮優位の立場で成果を得ることが出来るという思惑から日本との対話は急がない、日本は後から着いてくると思っている。

日本の経済制裁の効果が薄れているエピソードがある。秋に中朝国境を回った時、内陸部の山中にもかかわらず、海産物の「うに」が出てきた。つまり、日本が金を払っていた輸出品を今は中国が金を払って輸入しているわけだ。現地の人は「日本の輸入禁止のおかげで、海産物のウニや松茸を楽しめた」とジョークを言っている。

♀mかに、日本としても手詰まり感がありますが、その一方で新年早々に前原外務大臣が訪朝を匂わせ、北朝鮮もそれに呼応するという動きがありますが?

日朝関係の打開が後回しと言えども、今の金正日体制に続く金正恩体制が、頑なに過去の問題にこだわり日朝交渉で得た不信感を持ち続けることはないと思われる。なぜなら、金正恩の母親は在日出身だ。自分の妻や母親の出身地に関しては、人は必ず親近感を持つものだ。これがどのような形で今後出るのかはきちんと見極めなければならない。

個々の問題と同時に、先を見越した対北朝鮮戦略を日本は練るべきだ。国際社会、東北アジアに貢献するのは日本としても責務であるという観点で外交を進めるべきだろう。

(了)