北朝鮮で、脱北して韓国に住む家族と電話で連絡を取り合い、脱北を図ろうとした40代の女性が保衛部(秘密警察)に逮捕された。しかし、女性は起訴されることも処罰されることもなく半年後に釈放されたと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

両江道の金正淑(キムジョンスク)郡在住の女性Aさんは昨年7月、保衛部に逮捕された。Aさんは、脱北して韓国に住む夫からの仕送りを元手に商売をして裕福な生活をしてきた。

韓国や第三国に住む脱北者が、北朝鮮に残された家族に仕送りにすることは決して珍しいことではない。調査によると、その割合は約6割に達する。

Aさんは夫とは携帯電話を使って連絡を取り合ってきたが、ある日夫から「韓国に来ないか」と脱北を勧められた。それに従い、脱北の用意を進めていた矢先に逮捕された。北朝鮮当局は、出稼ぎのため中国へ行くケースよりも、韓国へ逃れようとした人を何倍も厳しく罰する。Aさんも重罪は避けられないというのが、地元住民の支配的な見方だった。一般的には、どれだけ軽く済まされても3ヶ月の労働鍛錬刑(懲役刑)だ。

ところが、Aさんは今月20日に釈放された。地域住民の間では「なぜ釈放されたのか」との疑問がわきあがった。やがて、Aさんが保衛部に5万元(約81万円)ものワイロを手渡していたことが知れ渡った。

当局は昨年後半から、国境地帯における外国との通話に対する取り締まりを強化してきた。そのせいで、韓国に住む脱北者と北朝鮮の家族の間の通話や送金が、かなり難しくなっている。保衛部は住民を対象にした講演会でAさんを「外国との通話の取り締まり」の見せしめにしたと語っているという。

一部始終を知った地域住民は「カネさえあればできないことはない」「軽い罪なのに保衛部の牢屋から出られず苦労している人が大勢いるのに」「貧乏人だけが教化所行きだ」などと嘆いているという。

この一件では、保衛部が韓国にいる夫にワイロの送金を強要した可能性もある。つまり、保衛部は妻を人質にして夫に身代金を要求したということだ。保衛部は、定期的なワイロと引き換えに脱北者家族の便宜を図る場合もあれば、脅迫してむしり取る場合もある。

韓国の裁判所は、北朝鮮の保衛部にコメを送った脱北者に対して実刑判決を下している。脱北者とその家族は、韓国にいても北朝鮮にいても、家族を救うためにはかなりのリスクを背負わざるを得ないのだ。

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