北朝鮮の貿易会社の海外駐在代表らは、国際社会の厳しい制裁の網をかいくぐり、ありとあらゆる手を尽くして輸出入を行っている。

そんな彼らに対して、北朝鮮当局は突如として帰国命令を出した。理由が明らかにされていないこともあり不安が広がっていると、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平壌の情報筋が伝えている。

当局が、中国の北京と丹東に駐在する貿易会社の代表に帰国命令を出したのは今月17日のことだ。

通常、帰国命令は年末に出されることが多い。事業の「総和(総括)」を行うためだ。海外に駐在する貿易関係者の総和は、年間の実績を報告するもので年末に1ヶ月程度かけて行われる。貿易成績が悪かったり、駐在期間が長くなりすぎた関係者には、彼らが最も恐れる完全帰国が命じられる。

平壌の本社勤務ならまだしも、地方の官職に飛ばされでもしたら、北朝鮮と比べ遥かに豊かで自由な中国での生活は二度と望めなくなる。

今回の帰国命令は、金正恩党委員長の4回目の訪中の直後に出された。対象となっているのは中国生活が長く、国際社会の制裁下でも国のノルマを着実に達成、その手腕を認められた人々だ。成績が悪いわけでは決してない。

年末の総和以外で急な帰国命令が出されるのは、本社の組織改編による場合もあれば、本社の幹部から依頼された物品を確保できなかったため、恨みを買ってその腹いせにクビになる場合もあるという。

「平壌の本社の幹部が、貿易会社の海外駐在代表を引きずり下ろすことなど朝飯前だ」(情報筋)

さらに情報筋は、貿易会社間の勢力争いの影響も指摘する。つまり、比較的近い将来に制裁緩和が見込める現状において、中国東北に進出した北朝鮮の貿易会社の間で貿易利権を巡る熾烈な勢力争いが起きるかもしれない。そのスケープゴートになった貿易会社の代表が帰国させられる事例が、今までも少なからず存在したとのことだ。

北朝鮮の貿易会社は、朝鮮労働党、人民保安省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)、軽工業省、第2経済委員会(軍需産業)、金日成主席と金正日総書記の遺体が安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿など、国の機関の所属となっている。各社は「ワク」と呼ばれる輸出入許可権を得るために、熾烈な競争を繰り広げている。「同国人のよしみで」仲良くするというわけにはいかないのだ。

平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋によると、命令を受けて帰国し、無事中国に戻って来られた人でも、大都市から中小都市に配置換えになることが多いという。北京や上海に戻るには、党に対する忠誠の資金(上納金)に加えて、本社幹部への相当額のワイロを渡すことが必須だという。大都市の方が儲かるので、ワイロは一種の投資と見ることもできよう。この情報筋は、次のように付け加えた。

「結局、わが国(北朝鮮)の貿易業者が生き残るには、輸出入の実績よりは、党におべっかを使いつつおとなしく従うなど、権力機関とうまく付き合う処世術に長けていなければならない。このような貿易部門の構造的病弊はひどくなる一方で、わが国の貿易の未来を一層暗いものにしている」

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