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旧ソ連に共感を持つ人の多くは、社会主義経済のためではなく、失ってしまった超大国の地位を惜しんでいる。こうした新興国家主義、民族主義は、現在ロシアの社会雰囲気にひどい影響を及ぼしている。

このような傾向をよく見せてくれる特徴が、反米思想の強化だ。筆者が育ったソ連時代のメディアは、反米宣伝を休みなく行ったが、そのような宣伝をそのまま受け入れた人はあまり多くなかった。1970年代にソ連の青年たちは、アメリカをはじめとする西側勢力を戦略的な競争者とみなしたが、国家や民族に対する敵対感はあまりなかった。また、Rock音楽や映画のような西洋の大衆文化は、ソ連で爆発的な人気があった。

1980年代に入り、ソ連の体制に失望した若者が増えたが、彼らはアメリカを、理念化された地上の楽園で、ソ連も真似なければならない国として見るようになった。ソ連での親米思想は1990年を前後に、絶頂に達した。ソ連の住民の中で、アメリカを外交的な競争相手や挑戦者と見る人はほとんどいなかった。

だが、こうした雰囲気は1990年代半ばから変わり始めた。ソ連の人々は連邦の崩壊を精神的な問題とは見なさなかったが、月日がたつほど、超大国を失ったロシア民族が辱めを受けていると考える人が増えた。

筆者の考えでは、ソ連の人々のこうした意識の変化の基本的な理由は、1990年代にソ連の多くの人が、資本主義が移植されれば、数年以内に生活がアメリカや西ヨーロッパをしのぐ水準まで向上すると思ったからだろう。しかし、1990年代にソ連は社会の混乱と経済危機が襲い、資本主義がもたらす経済の奇蹟を願った庶民の失望は大きくなった。1920年代のドイツの経験が見せてくれるように、こうした条件の下では、民族主義は感情表出の形態をとる。

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国内でこの民族主義の対象になった勢力は少数民族、特に中央アジアとコーカサス山脈出身の人たちだった。彼らはスラブ係と人種も違い、文化の差も大きく、組職暴力団もたくさん参加して葛藤が激しかった。また、旧ソ連の加盟共和国だった隣国に対する敵対感が増した。国際的な視点では、キルギスタンやグルジヤのように、ソ連邦の加盟共和国として考えられた地域はソ連の植民地だった。だがロシアの人々は、これらの地域は植民地ではなく、ソ連時代にロシアの犠牲のおかげで、ずっと大きな経済支援をもらった地域だと考えている。そのため、これらの新興独立国でロシアに対する批判が出れば、ロシアの人々のこうした国家に対する敵対感が増す。

だが、新たに登場した民族主義が引き起こした敵対感の基本的な対象はアメリカだった。筆者は44歳だが、こんなにひどい反米思想を、旧ソ連時代には見たことがなかった。

2007年の世論調査によれば、ロシア人はアメリカを最も敵対的な国家と考え、中国が一番友好的な国家だと思っている。1990年代にロシアでは、韓国で日本人たちを’倭人’と言ったように、アメリカ人に対する差別の名称まで生まれた。ロシアの歴史上初めてのことだった。

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外国のメディアは、こうした反米思想がプーチン大統領によって促進されていると主張する。ある程度、その可能性もあるが、筆者はプーチンはこのような傾向を醸成するよりは、自分の利益になるように、現存の雰囲気を巧みに利用していると考える。反米思想が強化され始めたのは、プーチンが大統領になる前からだ。国内の政治舞台でアメリカに対する批判的な宣言を言ったり、外交で強硬路線を実施するという約束は、民族主義が強まった投票者の間で人気が高い。ロシアは完璧な民主主義ではなく、緩やかな権威主義国と言えるだろう。だが、選挙は政府によって部分的に統制されるだけで、投票者が聞きたがる話をする人物や団体は、政権を容易に維持することができる。

ロシアの親北朝鮮化の背景は反米思想

こうした傾向は、ロシアの対朝鮮半島政策にも一定の影響を及ぼしている。1995年頃から、ロシアは北朝鮮と外交関係を改善する途中で、北朝鮮政権の立場を随分支持してきた。このような政策の理由は多くあるが、その中の1つがまさに、アメリカに反対することが国内的に人気があるということだった。

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興味深い点は、ロシア国内でも、金正日の北朝鮮をほめたたえる人が出始めたということだ。筆者が若かった時、ソ連では北朝鮮ほど人気のない国はなかった。1970年代のソ連では、北朝鮮に共感する勢力が全くなかったと言っても過言ではない。当時、ソ連の民族主義者たちは、北朝鮮を自主路線のため、反ソ連的傾向の国家と思って嫌がり、自由主義者たちは北朝鮮を極端なスターリン主義を体現する国家と考えて嫌った。また、政府と外務省は負担だが信じがたい’、にせ物同盟国家’と思って嫌った。

だが、今はそうではない。ロシア語のブログやフォーラムを筆者は沢山見るが、北朝鮮に対する批判をしたら、その批判は’アメリカの宣伝’や’CIAの工作’と言う人が1人や2人ではない。ロシア語で時々文章を書く筆者も、’アメリカのスパイ’や’アメリカの植民地政権である韓国のお金で北朝鮮を攻撃する人’という批判まで受けることがある。

1990年代末までは、ロシアでこのような親北朝鮮的な声はほとんど聞かれなかったが、今、オンライン上で北朝鮮関連の問題を討論する度に、参加者の5人のうち、少なくとも1人はこうした立場を取る。

それでは、このような新興の親北朝鮮勢力の特徴は何だろうか?この人たちの中には、北朝鮮を’純粋な社会主義国家’と理念化する共産主義者もたまにはいるが、圧倒的に反米思想が強い人が多い。彼らにとっては、アメリカに反対する勢力なら同感の対象になり、この政府に対する批判はアメリカを助ける反ロ行為と見なされる。

このような傾向は、北朝鮮の未来について考える人にどのような教訓を与えるだろうか。

一つの社会が転換することは、本当に頭が痛いことで、葛藤と不満がどうしても引き起こされる。北朝鮮も例外ではないかも知れない。社会的混乱がひどければ、暮らしが困難な時代とは言っても、失われてしまった安全、そして慣れた生活のため、昔の時代が理念化の対象になることがある。

25年後には、平壌の食堂でおいしい焼肉を食べながら、金日成時代は、連帯性と真実があふれた時期だったと振り返る人も見られるだろう。もちろん、そうした人たちは、明日飢え死にするかも知れない時代は忘れて、競争がなかった生活だけを憶えているようだ。