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北朝鮮との国境に面した中国の地域には、数多くの韓国系キリスト教会が存在する。中国での布教と同時に、北朝鮮からやってくる脱北者の支援が主な目的だ。

2016年には、脱北者支援を行ってきた牧師が何者かに殺害される事件も起きている。北朝鮮の保衛部(秘密警察)の要員が犯人ではないかと言われているが、事件は迷宮入りしたままだ。

(参考記事:中朝国境で朝鮮族牧師が殺害…北朝鮮の犯行との見方も

一方で保衛部の要員は、自国では厳しく禁じられている教会に出て、聖書の勉強までしているという。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、彼らが教会に通う目的の一つが脱北者の摘発だ。

「保衛員は教会に浸透し、宣教師が保護している脱北者の動向、人数、ブローカーなど脱北ネットワークについて探り出し、脱北者を逮捕、強制送還するための工作を行っている」(情報筋)

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つまり、教会に通い韓国人や中国人の牧師、宣教師、信者との関係を構築し、韓国の情報、中でも脱北者に関する情報を探るために聖書の勉強まで行うということだ。もし、韓国や第三国へ向かおうとしている脱北者が見つかれば、中国公安当局に情報を提供し、摘発させる。

彼らが教会に通う目的はそれだけにとどまらない。ビジネスだ。

韓国人の集まる教会は、ビジネスに関する情報交換の場だ。ある国の韓国系教会の牧師は「信者の多くは信仰のためではなく、カネ儲けのために教会に来ている、本当に神様を信じている人は少ない」と嘆くほどだ。

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中朝国境地域にいる保衛部の要員や一部の貿易関係者は国から、韓国に関する情報を得て、ビジネスにつなげよという国からの指示を受けている。それを実行するにあたっては宗教が重要な媒介となるので、聖書を勉強し、キリスト教について知ってから本格的な工作に入るという。

ターゲットを見定めて、聖書に関する話をして信頼感を与え関係が構築できれば、韓国人ビジネスマンを紹介してもらったり、韓国の情報を聞き出したりするというのだ。

話がまとまれば、中国人の雇われ社長を間に立てて、工場を建設する。資本は韓国人ビジネスマンが投資し、北朝鮮からは、低賃金で働く労働者を送り込むという具合だ。

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「保衛部に繋がる貿易関係者は大抵、教会に行って韓国人や中国人と交わり、ネットワークを作っている。保衛部所属の人が支配人を務める北朝鮮レストランは、物品や従業員に与える食料品、プレゼントなどを同じ教会の信者から調達することもある」(情報筋)

保衛員の教会通いは2000年代から行われてきた。ある北朝鮮国民は、このような証言をしている。

「2000年代中頃、友人が平壌の親戚宅を訪ねたところ、保衛部に勤める叔父が一張羅を着て『日曜日なので鳳岫(ポンス)教会に行く』と出かけ、数時間後に帰ってきた」 (ある北朝鮮国民の証言)

当局は、一部の保衛員、抗日パルチザンの家系など忠誠心の高い人を選び、ポンス教会に行かせている。保衛員は1〜2年通い、賛美歌を2〜30曲覚え、聖書をある程度理解することを求められるというのが叔父の説明であるとのことだ。

1988年に建てられたこの教会について、脱北者でキルボク教会の牧師を務めるパク・チョンホさんは2009年、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、朝鮮労働党の対韓国部署の傘下にある機関であり、韓国のキリスト教関係団体や海外同胞を抱き込み、外貨を稼ぐのが設立目的だと語っている。

しかし、このような「任務」のために教会に通うのではなく、真の意味でクリスチャンになってしまった場合、過酷な運命が待ち受けているのは言うまでもない。

(参考記事:「北朝鮮のキリスト教徒が『冷凍拷問』で殺されている」脱北者が証言