北朝鮮当局が、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)で進めている30階建ての高級ホテルの姿が、国境の川・鴨緑江対岸の中国・丹東市から捉えられた。

丹東で撮影された画像を見ると、新義州市の関門洞(クァンムンドン)で建てられているホテルの建物が丸い形をしていることがわかるが、平安北道のデイリーNK内部情報筋は、幹部の話として「首領様(金日成主席)を称える目的であのような形になった」と伝えた。

金日成氏は北朝鮮で「民族の太陽」と讃えられ、4月15日の生誕記念日は太陽節、遺体が葬られた国立墓地は錦繍山(クムスサン)太陽宮殿と呼ばれる。ホテルの名前はまだ決まっていないが、金日成氏にちなんだものになるだろうと情報筋は見ている。

また、中央の丸い建物を両側から支える形で建てられている建物について現地では「白頭山を形どったものではないか」と噂されているとのことだ。つまり、金日成氏(太陽)を「白頭血統(金氏一家)」が支えていることを表したというのだ。

ホテルの建設費用は5000万から6000万元(約8億1000万円〜9億7000万円)、下層階には商業施設、中層階には宿泊施設が入り、今年初めに完成予定だという。なお、この金日成氏を称えるホテルには、あろうことかカジノが併設されることになっていたが、自国民が入り浸ることを恐れた中国側からの抗議を受け、取り消されている。

このホテル建設は、金正恩氏が打ち出した新義州市建設総計画の一環と思われるが、情報筋によると、関連の工事はすでに昨年初めから始まっており、5月には新義州駅周辺にあった民家が取り壊された。住民は立ち退きを余儀なくされたが、新築マンションに入居できる権利を与えられたとのことだ。

計画では、線路と緑地帯に沿って大通りを建設し、そこに高層マンションを50棟、商業施設、行政機関、20階建て以上の世界的な高層ホテルを10棟以上建てることになっている。また、鴨緑江沿いにも高層マンションを建てる。

すでに建設が進められている元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区や三池淵(サムジヨン)郡再開発と同時並行となる今回の巨大プロジェクト。国の経済がハコモノに押し潰されることになった、1989年の第13回世界青年学生祭典を想起する読者もいるだろう。

1988年のソウルオリンピックに対抗する目的で行われたこの祭典だが、参加者を受け入れるためにメーデースタジアム、東平壌大劇場、両江(リャンガン)ホテル、西山(ソサン)ホテル、青年ホテルなど数多くの巨大建築に、当時の北朝鮮の国民総生産(GNP)に匹敵する47億ドル(当時のレートで約658億円)が投じられた。その負債が重くのしかかり、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の一因となったとも言われている。世界最大の廃墟と揶揄される柳京(リュギョン)ホテルはその「名残り」だ。

ただ、当時と違う点があるとすれば、不動産が商品化したことだ。1980年代、北朝鮮で不動産の売買は行われておらず、多額の予算をつぎ込んで建物を建てても一銭の儲けにもならなかった。しかし、不動産市場が形成された今では、国はトンジュ(金主、新興富裕層)から投資を集めて建物を建てる。つまり、かなりの儲けになる。

一方、北朝鮮の庶民にとっては苦労の連続になりそうだ。建設労働者に提供するとして金品の供出を強いられ、極めて危険度の高い建設工事にも動員させられるからだ。

新義州で建設が進められているホテルの今年2月、8月、11月の状況(画像:デイリーNK)
新義州で建設が進められているホテルの今年2月、8月、11月の状況(画像:デイリーNK)

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