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北朝鮮で最も北東に位置する咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)。中国の吉林省延辺朝鮮族自治州の図們と国境を流れる豆満江を挟んで向かい合い、数十キロ先にはロシアとの国境もある。

地元の人の多くは、国境地域の住民に限って発行される「渡江証」という制限付きパスポートを持って国境を超え、非合法なものも含め貿易や出稼ぎに携わっていると言われている。その過程で、事件や事故に巻き込まれ命を落とす人も少なくない。

現地の情報筋によると、穏城の中心部から南に3〜40キロ離れた豆満江の川岸で、女性の遺体が発見された。20代と思しきこの女性は、ビニールで包んだ中国人民元の札束を腰に巻き付けた状態で倒れていたという。額は明らかになっていない。

金正恩党委員長は脱北に対して厳しい姿勢を取っており、無断で国境を越える者に対して「射殺しても構わない」との指示を下しており、実際、脱北の過程で射殺される人が後を絶たない。しかし、今回は事情が違うようだ。

中国に出入りするために川を渡るには、国境警備隊にワイロを渡して便宜を図ってもらうのが一般的だ。この女性は中国での出稼ぎで稼いだと思われる多額の現金を持っていた。そうなると、ワイロの額が跳ね上がることになる。それを嫌った女性は、闇夜にまぎれひとりで川を渡ろうとして浅瀬を探しているうちに、足を踏み外し流されたものと思われる。

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ちなみにブローカーを介して脱北する場合の費用は、1200〜1500万北朝鮮ウォン(約15万6000円〜19万5000円)にもなる。

遺体は国境警備隊から保安署(警察署)に引き渡されたが、身元が明らかにされていないことから、穏城の住民の間では不安が広がっている。家族が出稼ぎに行っている人が多いからだ。住民は、中国にいる家族の安否確認に追われているという。

密入国の過程で命を落とす人もいれば、中国で人身売買の被害に遭う女性もいる。その背景には、中国当局が脱北者を強制送還する方針を取っていることがある。強制送還されれば拷問を含む凄惨な人権侵害が待っているため、犯罪の被害に遭っても、当局に保護を求めることができないからだ。

(参考記事:少女たちまでが狙われて…なお続く北朝鮮女性の人身売買