北朝鮮の革命の聖地、三池淵(サムジヨン)の再開発は、金正恩党委員長の「肝いり」のプロジェクトのひとつだ。ところが、現場幹部のこだわりのせいで、一部の工事をやり直すことになってしまった。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、とっくに完成段階に入ったはずの5階建てマンション工事が未だに続いている。その理由は、一度建てたものを壊して建て直しているからだ。それも設計からのやり直しだ。

建設を指揮している2.16師団の幹部らが飛行機に乗って上空から視察したところ、「屋上が五角星(☆)の形に見えるはずが、鮮明に見えなかった」として、工事のやり直しを命じたというのだ。骨組みが組み上がった状態だったが、基礎まで壊してやり直すはめになったという。

この指示だが、現場幹部ではなく最高指導者が下した可能性がなくもない。金正恩氏と韓国の文在寅大統領は先月、民族の聖地と呼ばれる朝鮮半島の最高峰・白頭山(ペクトゥサン)を訪問した。そこに向かう飛行機から建設現場を見た金正恩氏が、やり直しを命じた可能性が考えられるというのだ。

金正恩氏は今年の夏以降、各地で進められている建設プロジェクトの現場を精力的に回っているが、行く先々で計画などの問題点を指摘し、責任者を叱責している。

例えば、金正恩氏が今年8月に建設が進められている白頭山観光鉄道を視察した際には「路盤工事がきちんとできておらず、路盤固めの状態と平坦度を科学的に測定し、技術工法の要求通りにしていないため、列車の振動が激しく、本来の速度が出せないように建設されている」と指摘し、やり直しに近い補修工事を行うよう指示している。

また、平安北道(ピョンアンブクト)の妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場を視察した際には、「冬眠しているのか」と責任幹部を厳しく叱責している。処刑されたケースもあるため、金正恩氏から指摘を受けた幹部は気が気でないだろう。

(参考記事:「殺されなくて良かった」金正恩氏の叱責受けた北朝鮮幹部ら安堵

今回のやり直しも、金正恩氏を恐れた幹部たちによる過剰反応である可能性もある。

建築の専門家で、現在は国務委員会局長のポストにある馬園春(マ・ウォンチュン)氏は、国防委員会設計局長を務めていた当時、自身が設計した平壌国際空港第2ターミナルのデザインが金正恩氏の不興を買い、両江道の山奥に追放されたこともあった。

(参考記事:死亡説もあった金正恩氏の側近が復帰…建築家の馬園春氏

一方で、現場の労働者は不満たらたらだ。

「労働者たちは口々に、(経済制裁下の)困難な条件の中で莫大な量の資材と労働力を集めて建てたものを、空から見たら屋根が気に入らないとの理由で建て直させるとは話にならないと言っている」(情報筋)

資材を改めて中国から取り寄せなければならないが、発注すれば簡単に揃う状況でもなく、手抜き工事は避けられないと地元住民は見ているという。

金正恩氏は朝鮮労働党創建75周年を迎える2020年10月までの完成を厳命しており、間に合わせるには、氷点下30度以下の極寒の中でも工事を進めなければならない。建物の外観には非常に気を使うのに、労働者の安全には全く気を使わないのが金正恩氏だ。

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