2018年に韓国に入国した脱北者の数は9月末の時点で808人。昨年1年間では1127人。決して少ないとは言えないが、頂点だった2009年の2914人と比べると半分以下に減少している。

脱北者減少の一因と言われているのが、北朝鮮当局の国境統制の強化だ。最近になり、脱北を助けるブローカーと、それに協力していた保衛員(秘密警察)と国境警備隊員らが8月末に一斉に逮捕されていたことがわかった。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは、中国との国境地帯である咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)で、10年にわたって脱北ブローカーを営んできた40代後半の男性だ。これほどの長期間、ブローカー業を営んでこれたのは、地域の保衛員の庇護があったからだ。

「ブローカーが脱北させた人が中国で逮捕され、咸鏡北道方面に強制送還されたら、地域の保衛員(秘密警察)が解決してくれていた。そのため、危機を何度も逃れていた」(情報筋)

今年の8月末にも、このブローカーが脱北させた女性が中国で逮捕され、北朝鮮に強制送還された。取り調べの過程で、ブローカーの名前も出してしまった。それでもいつもなら問題にならないが、今回ばかりはコネが通用しなかった。強制送還された先が咸鏡北道ではなく、平安北道の新義州(シニジュ)だったからだ。

脱北は、金正恩党委員長が「射殺せよ」と命じるほどの重罪だ。実際、脱北の過程で射殺される人が後を絶たない。

(参考記事:遺体を氷の上に放置…北朝鮮「国境警備隊」の猟奇的な実態

そんな重罪の幇助を長年続けるために、ブローカーは保衛員と国境警備隊員にワイロを欠かさない。ところが今回は、ワイロを受け取った側も逮捕され、脱北ネットワークが一網打尽にされたもようだ。

ブローカーには最高で10年の労働教化刑(懲役刑)が言い渡されることになるが、「見せしめ」として重罪に処されるとの噂が広がっている。

「穏城の雰囲気は非常に殺伐としている。裁判が近く開かれるが、保衛員の話では無期懲役か死刑になるらしい。協力者も無事では済まされず、20年以上の刑になり、保衛員はクビになると見られている」(情報筋)

2015年には両江道(リャンガンド)で、多くの人を脱北させてきたブローカー5人が銃殺されている。

(参考記事:北朝鮮、脱北を幇助した民間人5人を銃殺刑に

こうした取り締まりの強化を受け、脱北費用の高騰が続いている。2012年には200〜400万北朝鮮ウォン(約2万6000円〜5万2000円)だったが、今年に入ってからは1200〜1500万北朝鮮ウォン(約15万6000円〜19万5000円)に達している。