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北朝鮮と韓国は1日から、軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)の共同警備区域(JSA)や韓国北東部の江原道・鉄原の非武装地帯(DMZ)で地雷を撤去する作業を開始する。

地雷の撤去は、9月に開かれた南北首脳会談(平壌)で署名された軍事分野の合意書を履行するための措置だ。合意書で双方は、地雷を撤去し、JSAを非武装化することを明記した。
現在まで、南北双方の警備兵は拳銃で武装している。これを、武装していない韓国軍と北朝鮮軍の将兵35人(幹部5人・兵士30人)ずつが一緒に勤務する共同警備の形に戻す。

北朝鮮と韓国は3年前、北側が軍事境界線付近に仕掛けた対人地雷がきっかけとなり、戦争寸前にまで行ったことがある。2015年8月、対人地雷に韓国軍兵士2人が接触して爆発。身体の一部を吹き飛ばされる重傷を負った。その瞬間の動画も公開されている。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

ここから南北双方の報復が繰り返され、危機がエスカレートしてしまったのだ。近年、北朝鮮は韓国軍の侵入を防ぐより、脱走兵が韓国に亡命するのを阻むために対人地雷を増設していたフシがある。

(参考記事:必死の医療陣、巨大な寄生虫…亡命兵士「手術動画」が北朝鮮国民に与える衝撃

食糧の横流しや性的虐待の横行など、北朝鮮軍の軍紀びん乱は知る人ぞ知るところだが、そのような状況の中で脱走兵が地雷原を突破し、徒歩で韓国側に逃れる事件が頻発していたのだ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

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いずれにせよ、地雷撤去によって、突発的な軍事衝突のリスクが低減されるのは良いことだ。

ただ、聯合ニュースが韓国陸軍関係者の話として伝えたところでは、DMZの地雷原は軍事境界線の南側だけでも面積がソウル都心・汝矣島(2.9平方キロメートル)の約40倍に達し、前線に配備された工兵大隊を全て投じても、地雷の撤去に約200年かかるという。

より効率的な撤去能力を備えていると思われる韓国軍がこれなのだから、北朝鮮側の地雷を撤去するにはどれほどの時間がかかるのだろうか。

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朝鮮戦争が休戦になってから今年で65年となったわけだが、この間の対立のツケを清算するために100年単位の、しかも何を新たに生むわけでもない非生産的な作業が必要になるわけだ。また、前述した爆発の瞬間の動画は、おそらく永遠に残る。南北対立の証拠として、歴史に深く刻み込まれるのだ。

これもまた平和がいかにありがたく、また生産的であるかを示す事例のひとつと言えないだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記