人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮では近年、親が子どもに塾通いさせたり、家庭教師を付けたりする風潮が強まっている。親たちは学校よりもむしろ、こちらの方を重視しているくらいだ。

以前、韓国の北朝鮮専門ニュースサイト、ニューフォーカスが伝えたところでは、芸術大学や師範大学を出たばかりの若者は、学校の教師ではなく、家庭教師になることを目指すという。学校の教師になっても給料をほとんどもらえず、生徒の親からワイロを受け取り、糊口をしのがざるをえないからだ。一方、家庭教師は能力さえあれば、いくらでも稼げる。

家庭教師に払われる授業料は1ヶ月に150ドル(約17,000円)から200ドル(約22,000円)。コメ1キロが5000北朝鮮ウォン(約65円)で取引されていることを考えるとかなり高額だ。

一方、家庭教師の増加は、不倫の増加をもたらしている。

清津(チョンジン)出身の脱北者、シンさんによると、清津芸大を卒業した若い女性は、金持ちや当局幹部の子女の家庭教師になることが多い。中には当然、美人もおり、教え子の父親がちょっかいを出す例が珍しくないという。

(参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

そんなとき妻は、子どもの教育のためだと思い、大騒ぎせずに「ウラ」で解決するのだそうだ。

家庭教師として働くことは、結婚の準備の一環でもある。

シンさんの姪は、清津芸大の声楽科を出て5年間家庭教師をして、結婚に必要な費用を稼いだ。一方で、学校教師になった姪の友人は、まともな服1着すら買えず、両親から経済的な支援を受ける状況だという。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮においては、とくに農村部に住む貧困層の女性らの窮状が知られているが、都市の大学出身者といえども、いつ転落してもおかしくない危うい環境にいるわけだ。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

一方、最近の教育熱の高まりは、家庭教師に対する需要増につながっている。かつて、個人授業はトンジュ(金主、新興富裕層)の家庭に限られていたが、最近は一般庶民の間にも広がっている。

「多くの人々は(公立の)学校より、塾に通わせたり、家庭教師を雇って家で勉強する方がいいと思っていて、あちこちに様々な科目を教える塾ができた」(平安南道<ピョンアンナムド>のデイリーNK内部情報筋)

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

この情報筋によると、塾や家庭教師は元々大学入学を目指す高校生たちを対象にしていたが、今では声楽、スポーツはもちろん、コンピュータ、ダンス、美術、楽器など、様々なジャンルに広がっている。

別の情報筋によると、このような塾は当初、教師の自宅で行っていたが、儲かるにつれ別に建物を確保して運営するようになった。授業料は半日の場合1ヶ月に10ドル(約1100円)、全日なら15ドル(約1700円)だ。これなら庶民でも経済的に余裕がある人ならば手が届く。

塾が増加するにつれ、競争も激しくなっている。

「親たちは、教師の教える能力、実力を見て子どもを預けるかどうか決める。そのため教師たちも資質や実力がなければ塾を運営できない」(情報筋)

私教育が流行る背景には、思想教育ばかりを重視し、そのうえ子どもたちを様々な労役に動員する公立学校に通わせるだけでは、市場経済化する北朝鮮で生き残れないという危機感がある。

(参考記事:北朝鮮の中高生「残酷な夏休み」…少女搾取に上納金も

ちなみに、これらの塾は当局の許可を受けて運営されるものではない。だからといって、当局は積極的に取り締まる姿勢を見せていない。当局も、子どもに教育を受けさせたいという親たちの熱意にはかなわないようだ。

(参考記事:北朝鮮で少年少女の「薬物中毒」「性びん乱」の大スキャンダル

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記