北朝鮮の10の軍団創設の背景には、まず北朝鮮の有事の際に中国人民解放軍がすぐさま進入出来るのがまさに両江道地域という点が挙げられる。また、少なくない北朝鮮の特殊部隊が密集している状況で、教導隊だけで地域の防御を任せるのは適切でないという北朝鮮軍首脳部の問題意識が反映されたものと推定される。
消息筋は「実は、これまで両江道地域の軍事的価値は思っている以上に低く評価されてきた。三池淵飛行場やミサイル部隊、白岩郡のレーダー基地、厚倉郡のミサイル部隊などの主要な戦略施設が集まっている点を見ると教導隊の武力のみで地域の防御を実行すること自体が限界だった」と説明する。
特に「今回の10隊の創設を通じて両江道の要地防御が強化されるという意味もあるが、万に一つの可能性としての中国の軍事的な動きに対応する効果もある。中央では、核実験(2006年10月)の成功以後、『中国がいつ我々を裏切るのかどうかわからない』という懸念を持っているらしいが、それに伴う措置である可能性もある」と分析した。
一方、北朝鮮が金正恩の後継作業と足並みを揃え、軍首脳部人事異動や野戦軍部隊の再編過程で10軍団が創設されたのではないかとの観測も出ている。
金正日は9月27日に「命令第0051号」を通じ、金正恩に人民軍大将の階級を授け30人余りの将軍級人事を断行している。また、国防委員会決定を通じて人民軍総参謀長のリ・ヨンホを大将から副元帥に昇進を発令した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩は大将昇進2日後に党代表者会で党中央軍事委員会第1部委員長に選出され、先軍政治の継承者の地位を獲得した。金正恩の後継作業が公式化されることによって、全般的な野戦部隊の再編成が予定されていた可能性が高いと思われる。特に、今年3月の天安艦事件と11月の延坪島攻撃など引き続き対南軍事挑発を行っている点も、現在の北朝鮮軍内部で重大な変化が起きているのではないかという疑惑がもたれている。
北朝鮮は両江道10軍団の創設を通じ計9個の「精鋭軍団」を保有することになった。DMZの防御を主な任務とする1軍団(江原道淮陽)、2軍団(黄海北道平山)、4軍団(黄海南道海州)、5軍団(江原道平康)などの4つの軍団と、後方の防御を担当する3軍団(南浦)、7軍団(咸鏡南道咸興)、8軍団(平安北道塩州)、9軍団(咸鏡北道清津)に加え、新設された10軍団(両江道恵山)の計5つの軍団を揃えた。6軍団は1996年の軍事クーデター事件で部隊が解散させられている。これらの精鋭軍団らは、通常は1個〜2個戦闘師団あるいは機械化師団を主力とし、最大で3〜4個の教導旅団や各種の兵科大隊から構成されている。
しかし、実際にはこの9つの精鋭軍団よりも遙かに強い戦闘力と兵力を誇る部隊が存在しているという。その戦闘軍団の正式名称は「最高司令官作戦予備隊戦闘軍団」だ。精鋭軍団の第1次任務は防御であるが、この戦闘軍団の第1次任務は「南進攻撃」だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面代表的な戦闘軍団は425訓練所(平安南道定州)、806訓練所(江原道文川)、815訓練所(黄海北道瑞興)、820訓練所(黄海北道沙里院)、620訓練所(黄海北道新界)等がある。北朝鮮は全体的な地上軍の兵力を少なく見せる為に、戦闘軍団を「訓練所」と偽っている。
この他にも、砲兵を主力とする「砲兵指導局」や敵地の後方侵入を主任務とする「教導指導局」も戦闘軍団に分類される。平壌の防御を専門的に担当している91訓練所(平壌防御司令部)も軍団級レベルの兵力を保有している。