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北朝鮮の音楽といえば、日本ではモランボン楽団などに代表されるガールズバンドがよく知られているが、彼女たちが国の宣伝の第一線に登場する背景には、北朝鮮が政策的に音楽を重要視している事実があると言えよう。

北朝鮮は建国直後の1949年3月、国立音楽学校(現金元均名称音楽総合大学)を設立し、音楽家の養成を始めるなど、音楽教育に力を入れている。また、子どもたちは、小学校から楽器を習わされる。中でも普及しているのがアコーディオンだが、それが学校から盗まれる事件が起きた。

事件が起きたのは、中国との国境に面した両江道(リャンガンド)金正淑(キムジョンスク)郡にある高級中学校(高校)だ。現地のデイリーNK内部情報筋によると、校舎本館の機会実習室と別館の音楽室に保管されていたアコーディオンがなくなっているのが発見された。発見したのは、9月1日の2学期開始を前に学校の点検をしていた校長だ。

外部から何者かが侵入した痕跡があったため、教師全員を集めて点検を行った結果、盗まれたとの結論に達し、郡の保安署(警察署)に通報した。また、アコーディオンに関連する生徒たちから他に盗られたものはないか聞き取り調査を行っている。

通報を受けた保安署は、実習室と音楽室の南京錠が壊されているのを確認、窃盗事件と見て捜査に乗り出した。保安員(警察官)は事件が発生したと思われる先月24日から26日までの間に学校の警備を受け持っていた教師から事情聴取し、近隣住民から聞き込みを行うなど大々的な捜査を行っているが、31日の時点で容疑者の逮捕には至っていない。学校当局は、内部の犯行である可能性もあると見て、調査を行っているものの、これと言った物証がない状況だ。

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音楽小組(クラブ)の生徒たちは、9.9節(9月9日の建国記念日)の行事の音楽競演大会に出場するために、夏休み返上で練習に励んできた。アコーディオンを取り戻せなければ、出場ができなくなってしまう。学校当局もこのままでは2学期の授業が一部できないと言い出している。

だからといって、そうおいそれと新品を買うわけにも行かない。北朝鮮の学校は当局から財政的支援を得られず、生徒や父母から資金を集めて「自力更生」せざるを得ない状況だ。

金正恩党委員長は、教育の現代化政策を提唱し、校舎の改築、パソコンなどの導入を進めているが、その費用は生徒や父母に追わせている。

(参考記事:中高生は「教科書なし」…経済制裁に苦しむ金正恩政権「本当の内情」)

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それどころか、無料で配布されるはずの教科書や制服ですら市場で買わざるを得ない状況だ。

(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生

決して裕福とは言えない地域だけあって、1台3000元(約4万9000円)もする中国製のアコーディオンを複数台買うのは非常に困難だろう。父母たちは保安署に押しかけて「泥棒を何とか捕まえてほしい」と嘆願している。

父母の間では、学校が発電機と監視カメラを買って貴重品のある部屋に設置すべきだとの声が上がっていたが、学校当局は予算がないとして難色を示していた。結局は費用を父母が負担するしかないが、設置が進まないうちに窃盗事件が起きてしまった。