2011年7月に北朝鮮の国営メディアが紹介した1枚の絵は衝撃的なものだった。煕川(ヒチョン)2号発電所の建設現場に動員された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士たちが、金正日総書記から贈られたプルゴギ(焼き肉)に感動して泣いている姿を描いたものだが、これが国外のメディアに大きく取り上げられ、北朝鮮の食糧事情がいかに劣悪かを大々的に宣伝する逆効果を生んでしまった。

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北朝鮮の民間人の食糧事情は、このときより大幅に改善しているが、兵士たちの食糧事情は相変わらずだった。民間人はもはや食べようとしないトウモロコシ飯に、塩漬けの大根、大根の葉っぱのスープがやっとだ。

栄養失調も多発している。そのせいで、兵士が脱走して盗みを働く出来事が多発。中国に逃れた兵士が強盗殺人事件を起こしたり、中国当局に追い詰められ人質を取り立てこもったりという事件まで起きた。

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こうした「飢え」を原因とする軍紀の乱れは、「マダラス」や「書類整理」と呼ばれる性的虐待などを嫌った兵役忌避と相まって、北朝鮮の軍事力を地盤沈下させていると見られている。

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ところが、最近になって軍の食糧事情が急速に改善し、食糧配給量が目に見えて増加し、おかずの品数も増えたという。それを伝えてきたのは、黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋だ。

朝鮮半島を分断する軍事境界線を挟んで韓国と向かい合う地域だけあり、「民間人より軍人の方が多い地域で、軍部隊の中の事情が外にまでよく伝わる」(情報筋)というところだ。

まず、主食は依然としてトウモロコシ飯だが、以前の1.5倍の量が出るようになった。また、おかずも野菜などで作ったキムチなどが豊富に出るようになったという。

その理由について情報筋は、軍向けの食糧を生産する後方基地(協同農場)での生産量が増えたことを挙げた。

「後方基地では分組が活性化し、ノルマで定められた以上の生産量は、栽培した個人のものとなるため、全体的に生産量が増えた」(情報筋)

情報筋の言う分組が、2012年の「新経済管理体系」の導入で、家族が一定の広さの農地の農作業を任され、収穫に応じて分前を得られる「圃田担当制」のことを指すものか、それ以前の作業班単位で農地を任せる「分組管理制」を指すものかは不明だ。

いずれにしても、協同農場に加え、軍部隊が食糧確保のために独自に儲けている副業地の生産量も増え、豆腐、おから、豆モヤシ、キノコや野菜などを使ったおかずが出されるようになった。

これには、金正恩党委員長の精力的な現地指導(視察)が力を与えた可能性もある。金正恩氏は最近においても、軍傘下の塩辛工場や納豆工場、ナマズ養殖場を訪れ、「おかず大作戦」とも言える活動を繰り広げている。

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また、兵士の食糧問題と絡み、多くの軍幹部が解任、出党(労働党からの追放)、粛清されたこととも関係しているとも言えよう。

軍における食糧不足は、非効率的な協同農場の運営、劣悪な道路事情による輸送時のロスに加え、軍幹部による横領も一因だった。幹部は国からまともな給料が支給されないため、兵士向けの食糧を横領、横流しすることで現金収入を得ていたが、粛清がこれらの不正行為に対する警告になったという見方だ。

実際、情報筋も「軍需品とおかずを横流ししてきた幹部の腐敗が減ったことも理由だ」と指摘している。配給がうまくいっている部隊では、月に1回肉が配給されるようになった。これは、食糧事情が比較的よかった1980年代以前のレベルに戻りつつあることを示している。

食糧のみならず、衣服などの物資も以前と比べると改善され、兵士たちの軍服争奪戦もかなり減ったとのことだ。

軍における食糧事情の改善については、今年7月にも伝えているが、さらに状況が改善したものと思われる。

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しかし、このような食糧事情の改善がどれほど持続するかはわからない。国際社会の経済制裁は未だ解除されておらず、民間人の食糧事情の悪化が伝えられ、さらにこの夏の猛暑で凶作になると予想されている。一度満足の行く食事をした兵士たちが、急に配給を減らされるとどれほど大きな不満を持つか。

兵士たちは、民間人の食糧を略奪することで延命してきたが、また同様の状況に戻る可能性はいくらでもあるのだ。

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