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北朝鮮の国家安全保衛部(韓国の国情院に該当)は今月5日、記者会見を開いて、外国人スパイとこれに同調した北朝鮮の住民を逮捕した事実を対外に向けて公開した。

この間、幹部の教育と住民の敵対意識を鼓吹するために、内部だけで活用していた’スパイ事件’を公開したことは非常に異例の措置であった。脱北者は今回の事件は、それほど北朝鮮内部が混乱し、体制に挑戦する行為が頻発していることの反証であるとも解釈した。

2000年代から、国家のインフラの破壊などを通じて、体制への不満を表出する行為が頻繁に起きた。北朝鮮国内の幹部対象の講演会では、こうした国家施設の破壊行為を防止しようという内容が時折伝えられた。

2003年3月と8月に、労働党の中央委員会では、“我が国の内部にしのび込んだ反党、反革命悪質分子、資本主義の退廃思想をまき散らす反社会主義的な異色分子の策動を徹底的に踏み潰せ!”という言葉を下逹した。そして咸鏡南道とケマ高原一帯を中心に、頻繁に発生する送電塔の破壊事件を例にあげて、反共和国策動を一掃しなければならないと主張した。

実際に、2003年6月には、咸鏡南道から両江道に入ってくる高圧電線を連結する送電塔が破壊されて、両江道全域で停電が発生した。停電になると、両江道のサムジヨン精密機械工場などの軍需工場の生産ラインまでストップした。また、新たに復旧して再稼動を控えた、恵山青年鉱山の送風管まで稼動が止まった。

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2000年代、送電塔の破壊事件が頻発

当時、北朝鮮の電力関係者によれば、こうした破壊行為は主に、5月から8月の梅雨時や、台風が過ぎ去る時に主に発生したという。

送電塔を破壊する者たちは、朝鮮半島の北部に台風や集中豪雨、強風が集中する5〜9月の間を選んで、人が入ってこない山奥に行って送電塔のねじを解体して消えるという。ねじが緩んだ送電塔は強風を伴った集中豪雨がくると、幾日も堪えられずに倒れるという。

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北朝鮮政府が幹部の講演会でこのような事件の実例まで行って取り上げるということは、事件の頻度やそれによる被害が深刻だということを意味する。

もちろん、こうした事故は一般の住民にはほとんど知らせない。国家施設の破壊行為が住民たちに知られた場合、波長が一波万波と拡大し、内部で動揺が生ずることを憂慮するからだ。

送電塔の崩壊で軍需工場まで止まると、送電塔があった咸鏡南道の保衛部と保安省は大騒ぎになった。政府は送電塔を破壊した者たちを逮捕するために、大々的な捜査に乗り出したが、犯人を検挙したという消息は聞こえてこなかった。

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金父子の革命史跡地の電源もストップ

こうした送電塔の破壊行為は、その後も続いた。2004年5月に配布された幹部対象の文献には、’電力担当者たちの定期的な巡察で発見されて、あらかじめ防止した事例を除いても、実際に送電塔が倒れた事件は幾つもある’と明らかにされた。

文献には慈江道と両江道一帯を通じる送電塔の破壊で、金父子の革命思想を宣伝する戦跡地と史跡地の電力供給系統が完全に途切れ、これを復旧するために1週間かかったと書かれていた。

講演の資料によると、こうした破壊行為は国家経済はもちろん、地方と軍部隊に対する金正日の視察にも影響を及ぼしているという。

2000年代の初めから発生した送電塔の破壊事故の犯人が検挙されないので、組織的犯行なのか、数人の行為なのか、目的が何なのかは知られなかった。ただ、体制に不満を抱く少数の人々が犯人だと推測されるだけだった。

このような事件以外にも、個別に幹部や保安員(警察)、保衛員(国情院の要員に該当)らに対して恨みを晴らそうとする人たちが、該当の保衛員や家族に仕返しする行為も頻繁に起きた。今年の4月にデイリーNKが報道した、新義州の保安員襲撃事件もこれをよく示している。

保安員と保衛員に対する個人的仕返しも増加

特に最近になり、一部の悪質な保衛員や保安員が亡くなると、その墓を魔ュこともあり、関係者だけではなく、住民までが驚愕したこともあった。

各種の講演会ではこうした事件が、我々の社会主義制度に恨みを抱く反革命分子、悪質分子の行為と強弁しているが、幹部や権力者は不安感を隠せないでいる。

2006年に北朝鮮を脱出して韓国に来たキム・ミョニル(仮名)氏は“事件を扱う捜査官たちが審問を受ける人々の前で、露骨にこうした仕返しを警戒する発言をしている”と語った。

キム氏によれば、捜査官たちは犯罪の容疑を受けた人に、’私もこれが一生の職業ではないが、人の仕事は分からないじゃないか。お前に恨みを買いたくない’と言うという。北朝鮮で監獄に入った経験がある国内の脱北者の多くが、こういうことを言う人に2度は会っているともいう。

北朝鮮の住民も、送電塔の破壊行為で停電の被害を受けるため、世論はよくない。だが、2000年代に入り、北朝鮮の住民の体制不満と、これによる抵抗が露骨化したことは否認できない事実だ。

まだ、こうした体制に挑戦する行為が組織的に行われているという情況ではない。だが、北朝鮮の体制に根本的な変化がない限り、情報の流出、反体制ビラの撒布や張り紙、国家の施設の破壊などは続くだろう。